研究課題/領域番号 |
19H00822
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
中山 忠親 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (10324849)
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研究分担者 |
吉村 武 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30405344)
柿本 健一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40335089)
床井 良徳 小山工業高等専門学校, 電気電子創造工学科, 准教授 (80572742)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ秒パルス / ポーリング |
研究実績の概要 |
強誘電体バルク材料の作製プロセスにおいてオイルフリーの分極処理を実現するため、富士セラミックスのPZT C-203材をナノ秒パルス電場ポーリングし、共振-反共振法により圧電特性の評価を行った。気中において、絶縁油の使用温度である200 ℃以上の380 ℃まで加熱し、繰り返し周波数10 kHz, パルス幅300 ns, 電圧1 kVのナノ秒パルス電場を2 hr印加した。その結果、0.24の電気機械結合係数kpが得られた。また、X線CT画像の観測により、少なくとも50μm以上のクラックは発生していないことが確認できた。0.24のkpはカタログ値の41 %の値であり、分極は不十分であったが、バルク材料において絶縁油を用いずに200 ℃以上の高温度雰囲気下での分極処理を実現することができた。また、V-I特性、結晶構造の面からは直流分極とナノ秒パルス電場ポーリングとの間に差は認められなかった。しかし、ナノ秒パルス電場ポーリングではサンプルの経時変化が大きいことが明らかとなった。この点については更に改善が必要である。たとえば分極後に約150 ℃の雰囲気中で強制的にエージングさせることが考えられる。 ナノ秒パルス電場ポーリングにおける最適な条件の探索を行った。その結果、ナノ秒パルス電場ポーリングにおいてはキュリー温度よりも高い温度が適していることがわかった。また、パルスの電圧の影響はそれほど支配的ではなく、繰り返し周波数の方が重要であることがわかった。保持時間を長くすることで分極が進んでいることからも、実際に電界が印加された時間が重要であることが示唆された。 更に昨年度の研究結果から、ナノ秒パルスポーリングにおいてはやや脱分極の速度が速く、経時変化の面で問題があることが見いだされたため、本年度はナノ秒パルスと直流を重畳した新電源を開発し、これを用いる事で問題解決に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先ず、当初予定していた成果については全て達成することができた。ところが、昨年度の研究結果からは、ポーリングは出来るものの、その脱分極が比較的顕著であるという問題点が見いだされていた。これに対して本年度、ナノ秒パルスと直流電場を重畳する新たな方式による電場印加の結果、これまでナノ秒パルス電場で問題となっていた経時変化が抑制されることを見出した。市販の圧電体材料を用い、高温雰囲気中で加速試験を行った結果、市販のポーリング材の経時変化とほぼ同じことを確認している。このように、当初予定していた成果に加えて、新たに見出された問題点を解決する提案まで行えたという点から上記の表かを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、ナノ秒パルスポーリングの優位性は明確に検証することができた。今後は、本手法をさらに広範に展開するため、非鉛系誘電体へのポーリング特性の検証実験、既存の直流ポーリングとの比較実験、ナノ秒パルスポーリング後の試料の内部構造解析に基づく、パルスポーリング特有の分極メカニズムの解明について取り組む予定である。
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