研究課題
ひずみ遮蔽(正常なひずみが骨に負荷されない状況)による骨劣化を生じない新骨機能化インプラントロジー構築のため、ひずみ感受を担うとされるオステオサイト機能の観点からひずみ遮蔽のメカニズムの解明を試みた。とりわけ、骨へのひずみが異方的であることに基づく形態学的観点から、研究開始当初に立てた、異方的ひずみ場を効率的に感知するためにオステオサイト形態(骨小腔と骨細管)が異方的になるという仮説を、ひずみ負荷状態が比較的単純である長管骨を用いて実証した。すなわち、骨に負荷する主ひずみの方向に垂直に骨細管を伸展させることで、骨細管内での流体の流動を介して、オステオサイトが効率的にひずみ場を感知することが示唆された。一方で、剛性の高いインプラントの埋入によるひずみ遮蔽状態は、オステオサイトの形状を等方化し、オステオサイトによる異方的なひずみの感受効率を低減することが示唆された。この時、骨のアパタイトc軸配向性は顕著に低下し、結果として力学特性(ヤング率)の劣化を招いた。このことから、オステオサイトのひずみ感受と骨の力学的機能性が深く関連することが明らかになった。このように、インプラントを受け入れる骨の立場でのひずみに対する対応が、細胞・微細構造・力学特性の観点から明らかになりつつある。一方で、インプラント用の金属素材とその作製手法についての検討にも着手し、力学的信頼性の観点から有望な候補材料を見出している。
2: おおむね順調に進展している
計画に沿って課題が進行している。特に、インプラントを受け入れる側である骨の観点と、インプラント素材の両方の立場から研究を進めており、知見を相互に融合させつつ研究が遂行できている。
明らかになりつつあるインプラント埋入にともなうひずみ遮蔽に起因する骨劣化の機序と、新たな素材の検討結果に基づき、ひずみ遮蔽を抑制するインプラントの仕様を策定に着手する。さらに、ひずみ遮蔽度合いの異なるインプラントを作製し、動物骨に埋入することで、骨細胞応答を解析し、ひずみ遮蔽が最終的に骨劣化を誘発する機序を明らかにする。一方で、インプラント仕様策定と作製に関しては、同一素材であっても結晶集合組織によって弾性率をはじめとする力学特性を変えることができ、さらに、集合組織形成が3Dプリンタで可能であることが近年明らかになってきたことから、3Dプリンタを駆使したインプラントの創製を計画している。
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Additive Manufacturing
巻: in press ページ: doi un-issued
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