ひずみ遮蔽(正常なひずみが骨に負荷されない状況)による骨劣化を生じない新骨機能化インプラントロジー構築のため、ひずみ感受を担うとされるオステオサイトに着目した研究を推進した。長管骨において、オステオサイトが、骨に異方的に生じるひずみ場を効率的に感知するためにその形態(骨小腔と骨細管)をひずみ場に対して異方的に配置すること、異方的なひずみ場が低減した場合には、上記の異方性も低減し、異方性のひずみ場を感受する機能が劣化することを、さらに、それにともなってひずみ方向に沿った骨基質の配向性(異方性・骨質)が劣化することを、インプラントを用いないin vivo実験系にて基礎的に明らかにした。加えて、金属インプラント埋入時には、上記と同様のひずみ遮蔽が生じ、骨吸収のみならず、ひずみ遮蔽下で新たに形成される骨の基質配向が、元から劣化していることが明らかになった。一方で、人為的に一軸的なひずみを付与することで、オステオサイトのひずみ感受に基づき、ひずみ方向に特異的に骨基質配向が促進され、負荷応力に対する耐性(ヤング率)が上昇することを明らかにした。以上より、健全な骨を維持するインプラントの実現には、ひずみ遮蔽状態をできるだけ回避するとともに、積極的にひずみを負荷するような仕組みをインプラントに導入するという戦略が不可欠であることを見出した。この知見をもとに、骨へのひずみ遮蔽を低減した低ヤング率インプラントを創製し、ひずみ遮蔽による骨劣化を抑制することに成功した。
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