研究課題/領域番号 |
19H00830
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
堀田 善治 九州工業大学, 大学院工学研究院, 特任教授 (20173643)
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研究分担者 |
河野 正道 九州大学, 工学研究院, 教授 (50311634)
村山 光宏 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (90354282)
エダラテイ カベー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60709608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 巨大ひずみ加工 / 結晶粒超微細化 / 時効析出 / 圧力因子 / アルミニウム合金 / 電気伝導率 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本年度は、HPS (High-Pressure Sliding) 加工を施した純AlやAl-Mg合金より熱伝導率と電気伝導率を測定し両者にどのような関係があるかを調べた。Mgの添加量は、1, 3, 5, 8wt%で、HPS加工は室温にて圧力2GPaのもとスライド量を5mm, 15mmの2種類として行った。熱伝導率はレーザーフラッシュ法により、また電気伝導率は非接触型の渦電流法と接触型の四端子法を用い、すべて室温で行った。電気伝導率はいずれの方法によってもMgの添加量とともに一義的に減少した。しかし、スライド量(ひずみ投入量)に対しては測定誤差内で影響はなかった。熱伝導率も電気伝導率と同様な結果となり、両者にはウイーデマンフランツ則が成り立った。 一方、純Al、純Mg、純Tiの粉末を原子比で等量(1:1:1)混合し、HPT(High-Pressure Torsion)加工を室温にて施した試料の組織観察や構造解析を行った。組織観察は主に透過電子顕微鏡を利用したが、構造解析については一部の試料でSPring-8での高エネルギーX線回折より行った。HPT加工によりTiがα相からω相に相変態し、HPT加工の回転数とともに、大部のAlやMgがTiに固溶した。またAl3Ti, AlTi, AlTi3の金属間化合物相が観察された。100回転HPT加工した試料を300oCで1.5h熱処理すると、ω相はα相に逆変態し、固溶のAlやMgはAl12Mg17の化合物相となって析出した。昨年度測定した硬度の大幅な上昇は、このような化合物相の形成によるものであることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで準備を進めてきた電気伝導率や熱伝導率の測定が、AlやAl-Mg合金で実施することができ、両者の間にはウイーデマンフランツ則が成り立った。すなわち、両者ともMgの固溶量とともに減少した。一方では、HPS加工によるひずみに対しては測定誤差の範囲で影響がないことが分かった。 HPT加工で固化したAl-Mg-Ti合金の組織観察と構造解析から、3成分での固溶状態が明らかになり、また300oCにおける1.5hの熱処理ではAl12Mg17の化合物が析出して、強度が大幅に上昇する原因が解明できた。析出に伴う現象が電気・熱伝導率の測定によって明らかにされ、高圧状態での析出過程の解明に効果的に利用できることが示された。研究はこれまでの計画に沿って進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
マルチアンビルを利用した高圧印加での溶体化処理では、試料サイズが小さいことから、どのように引張特性を調べるかが課題となっていたが、微小な引張試験片で引張特性が測定できることが分かった。これはGaイオン照射で引張試験片を切り出す方法であり、引張特性が今後実施できると期待できる。また、粉末合成で作製した多量の固溶元素を含む合金も含めて、組織解析やX線構造解析を行い、引張特性との関係を明らかにする。最終年度にあたり、本研究を総括する。 関連の国内外の学会やシンポジウムに参加し、最新情報の取得にも努める。
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備考 |
受賞:軽金属学会70周年記念九州支部功労賞(堀田善治) Materials Transactions TOP3 Cited Author2021(Zenji Horita)
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