研究課題/領域番号 |
19H00833
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
黒田 一幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90130872)
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研究分担者 |
森 孝雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ多孔体 / 熱電変換材料 / 金属酸化物 / 鋳型合成法 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
無機材料のナノ構造や構造内の空間の次元・形状・サイズなど熱電変換特性に影響を与えうるファクターと熱電特性の正確な相関を理解することは材料設計上非常に重要であるが、各ファクターの精密制御が困難であるため明確な理解は得られていない。そこで本研究では金属酸化物のナノ構造・空間を精密設計する合成技術を確立し、ゼーベック係数・熱伝導率・電気伝導率の独立制御を可能にすることで、ナノ構造と熱電特性の相関を厳密に明らかにすることを目指す。 昨年度に引き続き、構造が良く規定された鋳型から金属酸化物ナノ構造材料の空隙率や空間サイズ・配列等を精密に制御する方法の確立に取り組んだ。組成・結晶性をナノ構造とは独立して制御することで、前年度成果と推進方策をふまえた組成・構造の金属酸化物の作製を発展させた。昨年度のシリカナノ粒子を鋳型としたZnOナノ多孔体の合成成功を基に、今年度はZnOにAlをドープすることでn型熱電材料の合成を試みた。その結果、Alのドープを示唆する結果が得られた。また、酸化物系の熱電変換材料として有力な候補である層状MxCoO2(M = Li, Na)のナノ多孔体化を試み、従来は困難であった細孔構造を制御した層状LixCoO2を合成することに成功した。さらに前年度成果として、ITOナノ多孔体をSPS焼結して得られた試料の熱電変換性能評価結果から、電気伝導率向上が重要課題であると認識できたが、これはナノ多孔体の粒子同士の接触が不十分であることで電気伝導率が低下すると考えられる。これらの検討をふまえ、今年度はクラックのない薄膜形態の試料作製にも取り組み薄膜形成に成功したが、クラックフリーの薄膜形成は検討課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリカ粒子を鋳型としたZnOナノ多孔体の合成について、Alがドープしたと考えられる試料の作製に成功した。また、酸化コバルトからスピネル型LixCoO2を経る多段階での合成により、層状LixCoO2ナノ多孔体を合成できることを見出した。そのため、当初予定していた酸化物ナノ多孔体の設計・合成は順調に進行している。薄膜形態の試料についても、部分的ではあるものの、ポリマー粒子を鋳型とした球状細孔を有するITOナノ多孔体薄膜が作製できている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、これまでに合成方法を確立した酸化物ナノ多孔体を活用して熱電特性の評価および設計指針へのフィードバックを進める。AlドープZnOについて、Al量の定量評価を行った上で熱電特性を評価する。また、層状LixCoO2ナノ多孔体については層間のLiイオンを脱離させることで導電性を高めた後、熱電特性の評価を進める。さらに、これまで合成に成功したITOを含めて、粒界での電気伝導率低下を抑制するためにクラックフリー薄膜の試料作製・熱電性能評価も推進する。
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