研究課題/領域番号 |
19H00836
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
増田 隆夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20165715)
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研究分担者 |
吉川 琢也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20713267)
中坂 佑太 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30629548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化学工学 / ゼオライト / 遷移金属酸化物 / 反応工学 |
研究実績の概要 |
遷移金属酸化物の超微細ナノ粒子を反応場とする触媒開発は、未踏の領域であり『新奇な活性種』の発現可能性を秘めている。『遷移金属酸化物の超微細ナノ粒子化』、『超微細ナノ粒子の高ポテンシャルエネルギーを維持』の実現に向け、ゼオライト結晶内に遷移金属酸化物超微細ナノ粒子を内包した新奇触媒の開発に挑戦するとともに、本触媒を用いた革新的反応の創出を目指している。2019年度はまずこれまでに達成している酸化鉄の超微粒子を内包したゼオライトの合成方法を応用することで、酸化鉄を含め5種の遷移金属種を対象に遷移金属酸化物超微細ナノ粒子内包ゼオライトの合成に成功した。これら触媒を用いて、重質油からのオレフィン合成を指向したアルキルベンゼンの分解反応を含め、8種の反応を実施した。その結果、含浸法、イオン交換法で調製したゼオライトでは活性を示さない反応に対して、遷移金属酸化物超微細ナノ粒子を内包したゼオライトのみが特異な活性を示した。これより当研究チームが開発した合成法は様々な遷移金属種の微細なナノ粒子をゼオライトに内包させることが可能な方法であり、遷移金属酸化物超微細ナノ粒子の活性を維持しながら安定に保持できる出来る技術であることを明らかにした。ゼオライトに内包される遷移金属酸化物の粒子径が触媒反応の活性に及ぼす影響を明らかにするため、ゼオライトに内包される酸化鉄の粒子径制御を試みた。内包される酸化鉄のナノ粒子径が制御可能であり、内包させる酸化鉄の微粒子化はアルキルベンゼン分解反応に対し優位であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、遷移金属酸化物超微細ナノ粒子を内包したゼオライトの合成による合成手法を確立し、様々な遷移金属酸化物への応用を図る。本触媒を用いたモデル反応を実施することで、その反応機構ならびに実験的・計算科学的手法による超微細ナノ粒子表面の活性種を明らかにする。さらに、触媒反応工学による反応速度解析によりゼオライトの細孔特性と新奇活性種のシナジー効果を最大限に発揮させる触媒設計指針を得ることを目的としている。2019年度は異なる遷移金属酸化物の超微細ナノ粒子を内包させたゼオライト合成を行った。これにより、申請者が開発した合成手法は遷移金属種を限定せず、様々な遷移金属酸化物の微細なナノ粒子をゼオライトの構造中に内包できることを明らかにした。また、ゼオライトに内包する酸化鉄粒子のサイズ制御にも成功し、内包させる酸化鉄ナノ粒子の微小化が触媒反応に優位であることを明らかにした。2019年度は当初の計画通り研究が進んでおり、概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、この合成手法を応用し、構造の異なるゼオライト種を対象に遷移金属酸化物の微細なナノ粒子を内包したゼオライト合成を目指す。また、2019年度は単一の遷移金属種を用いて合成を実施してきたが、2020年度では複数の遷移金属種により構成される複合遷移金属酸化物の微細なナノ粒子内包ゼオライト合成の可能性を検討する。また、将来的な社会実装を指向し、ドライゲルコンバージョン法などのゼオライト合成手法を応用し、これまでの合成手法とは異なり直接的な方法による遷移金属酸化物ナノ粒子内包ゼオライト合成方法の開発に挑戦する。 2020年度は調製した遷移金属酸化物の微細ナノ粒子を内包ゼオライトの触媒反応を実施するための反応装置を新たに準備し、ブチルベンゼンの分解反応を実施した。本触媒反応器を活用して、モデル反応物質としてアルキルベンゼンやアルキルフェノールからの芳香族、オレフィン合成を行う。得られた知見を2021年度実施予定の常圧残油(AR)や減圧残油(VR)、バイオマス由来黒水の資源化に繋げる。さらに本触媒の反応工学的な触媒設計を見据え、反応速度解析についても開始する。
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