研究課題/領域番号 |
19H00838
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 弘巳 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40200688)
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研究分担者 |
森 浩亮 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90423087)
桑原 泰隆 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40635330)
亀川 孝 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50525136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒 / 表面プラズモン共鳴 / 増強電場 / 汎用元素 / シングルサイト |
研究実績の概要 |
表面プラズモン共鳴を利用した機能材料の開発において、汎用元素を利用した安価なプラズモン材料の新規創成およびそのプラズモン材料を基盤とした高性能触媒の開発を実施した。物質合成や材料組織制御による実験手法と第一原理計算による理論計算手法を組み合わせ、材料中の電子密度・分布とプラズモン共鳴発現の相関を理解することで、光利用効率が高く、幅広い光の波長域を選択利用できる新しいプラズモン材料の創成を試みた。さらにプラズモン共鳴による触媒活性発現の機構を理解しながら、プラズモン材料と触媒活性点とをハイブリッド化することで表面プラズモン共鳴を利用する高性能触媒の開発を行った。得られた触媒に対し、オペランド観察実験と理論化学計算の支援により反応機構・プラズモン作用機構の解明を行うとともに、光エネルギーを新たな反応場(増強電場・強光場・電子移動)構築に利用する革新的触媒反応プロセスの創出を目指した。特に今年度では、以下の点を明らかにできた。 ①還元型モリブデン酸化物(HxMoO3-y)に、Wなどのヘテロ原子のドープやサイズ・構造の制御を試み、光吸収波長域を制御した。また形状を薄膜することにより吸収波長の制御が可能となった。 ②開発したプラズモン材料と触媒活性種(シングルサイト触媒)との複合化を行い、触媒性能の向上を試みた。 ③開発したプラズモン材料と触媒活性種の融合触媒を利用して、その特徴を生かした触媒反応系の創成を目指した。特に、PtやRuを複合化させた系では、CO2からのCOやメタノールの製造に有効な触媒になることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験手法と理論計算手法を融合しながら、以下の点を重視し研究を進めた。 ① 汎用元素を利用した安価なプラズモン材料の開発:本研究では安価な卑金属プラズモン材料である還元型モリブデン酸化物に主なターゲットを絞り、研究を行った。卑金属プラズモン材料を開発するキーポイントは、材料のバルク中の電子密度をいかにして金属と同レベルまで高めるかである。これまでに申請者が開発している還元型モリブデン酸化物(HxMoO3-y)を基軸材料として、新たな材料組成やサイズ・構造の制御を試み、光吸収・利用効率が大きく、光吸収波長域を自在制御したプラズモン材料の開発に成功した。 ② プラズモン材料と触媒活性種との融合:高性能触媒の開発には、プラズモン材料と触媒活性点との接合が重要ポイントとなる。上記①で合成したプラズモン材料と触媒活性種、特にプラズモン効果への感度が高いと予想されるPdなどのシングルサイト触媒との複合化を行った。ハイブリッド材料のナノ構造(形状や粒径)と異種金属との接合状態を精密制御することで、広範囲な可視光応答性のある触媒開発に成功した。 ③ プラズモン共鳴を利用した新たな触媒反応プロセスの探索:新しいプラズモン材料と触媒活性種を融合することで、その特徴を生かした触媒反応系の創成を目指した。これまで蓄積した知見からプラズモン触媒・シングルサイト触媒が有効に働く、水素キャリア分子(アンモニアボラン、ギ酸)からの水素生成、創薬に重要なクロスカップリング反応、分子内選択水素化反応を検討し、高活性、高選択性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
①グラフェン膜をシェルとするプラズモン材料の開発:ホットエレクトロンを効率よく反応基質へ輸送することを目的として、表面プラズモン共鳴を示すAuナノロッドの周辺を優れた電気伝導性を有する還元型酸化グラフェン(rGO)層で被覆した複合材料を開発する。 ②プラズモン材料と触媒活性種との融合:①において開発したプラズモン材料と触媒活性種(シングルサイト触媒)との複合化を行う。ハイブリッド材料のナノ構造と異種金属との接合状態を精密制御と構造解析を行うことで、広範囲な可視光吸収および赤外応答性のある触媒開発を行う。 ③プラズモン共鳴を利用した新たな触媒反応プロセスの探索:②において開発したプラズモン材料と触媒活性種の融合触媒を利用して、その特徴を生かした触媒反応系の創成を目指す。 ④反応機構およびプラズモン作用機構の解明:可視光照射下でのin-situ DRIFT, in-situ XAFSを駆使した局所構造解析(オペランド観察)、反応メカニズムの解明、表面プラズモン共鳴による触媒作用促進メカニズムの解明を行う。
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