研究実績の概要 |
令和4年度は、今までに構築した低抵抗・重金属配線の高効率SOT磁化反転技術を活用し、垂直磁化膜の無磁場でのSOTスピン反転技術に取り組むとともに、SOT電圧制御用薄膜およびデバイスを作製し新規アーキテクチャ技術の構築を目指した。以下に、令和4年度に得られた結果を具体的に示す。 (1)昨年度提案したCo/Pt/Ir/Pt/Co系Synthetic反強磁性書込み用電極(Phys. Rev. B 105, 054421 (2022))のSOT書込み効率の更なる向上を目指し、Co間の層間の相互作用の強さとSOT書込み効率の相関を調べた。具体的には、Pt/Ir/Pt層中のPt膜厚、Ir膜厚を変えることにより、Co間の層間の相互作用の強さを変化させた。その結果、SOT書込み効率は層間の相互作用が大きさの増大とともに直線的に増大すことが明らかとなった。SOT書込み効率は昨年度の6.5倍に上昇し、低抵抗で高効率な書込み用電極構造の作製に成功した(Appl. Phys. Exp. 16, 013002 (2023))。 (2)開発した垂直磁気異方性を有するCo/Pt/Ir/Pt/Co系Synthetic反強磁性書込み用電極を無磁場でSOTスピン反転させるため、界面に働くジャロシンスキー守谷相互作用の大きさ・符号を変える試みを行った。その結果、Co/Pt/Ir/Pt/Co系Synthetic反強磁性書込み用電極を無磁場でSOTスピン反転させることに成功した。 (3)SOT電圧制御デバイスを作製するため、Synthetic反強磁性書込み用電極の薄膜化に取り込んだ。具体的には強磁性Co間に反強磁性結合をさせるためにCo層の下に設けていた下地層を無くす構造の作製を試みた。その結果、CoFeB/Ru/CoFeBおよびCoFeB/Pt/Ru/Pt/CoFeB構造において、反強磁性結合の観測に成功した。
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