研究課題/領域番号 |
19H00846
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (80339241)
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研究分担者 |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
馬 騰 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10734543)
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00826274)
戸澤 譲 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90363267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単一イオンチャネル / バイオ二次元物質 / 脂質二分子膜 / 微細加工技術 |
研究実績の概要 |
小麦胚芽無細胞発現系を用いて合成したhERGチャネル(野生型)を脂質二分子膜中に包埋し,hERGチャネルの孔が薬物によって塞がれる過程を1分子レベルで解析した.これにより,薬物副作用の程度について,50%阻害濃度(IC50)を指標に定量することに成功した(Chem. Rec., 2020).また,この副作用定量法の変異型hERGチャネルへの展開についても検討した.さらに,このアプローチを展開して「hERG遺伝子型-副作用リスク」をデータベース化することが,「個別化医療のための副作用リスク評価」につながるというコンセプトを提案した(Chem. Rec., 2020).一方,脂質二分子膜は,自己集合性やナノ薄膜性,超絶縁性を有する魅力的なナノ材料でもあり,我々は,これまでにもフラーレン誘導体を包埋した脂質二分子膜の光応答特性について報告してきた(J. Electroanal. Chem., 2019).しかし,その応答の大きさや観測確率が低かったことから,トランジスタのようなゲートバイアスの導入に思い至り,脂質二分子膜系に従来の垂直方向の電圧に加えて,膜に平行な方向のバイアス電圧を印加できるトランジスタ様の膜系を構築し,膜平行バイアスによって光応答電流が増幅される現象を見出した(ACS Omega, 2019).また,脂質二分子膜のデバイス化という観点での課題とされてきた空気中での安定性の問題にも取り組んだ.脂質分子と銅フタロシアニン(CuPC)誘導体の混合溶液を水面上に展開することで,脂質-CuPC-脂質を単位層とした多層構造を容易に形成でき,その多層膜が空気中でも安定構造となることを見出した(J.Phys.Chem.B, 2019).この他,脂質二分子膜の絶縁性がその信号伝達に重要な役割を担う神経情報伝達について,その測定系インターフェースの構築にも成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要課題である無細胞合成したhERGチャネルに対する薬物阻害作用を1分子レベルで解析し,IC50の定量に成功して論文発表に至っている.また,本年度の重点項目であった脂質二分子膜内電極の配置を達成し,この電極に基づく膜平行バイアスの印加とその効果の記録にも成功した.こちらの成果についても,オープンアクセスジャーナルにて公表しており,当初の予定通り,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ハイスループット測定系の確立と無細胞合成したhERGチャネルとの結合を行い,hERGチャネル遺伝子型への展開について検討する.また,本年度に構築した膜平行方向のバイアス電圧の効果について,その発生メカニズムについて検討するとともに,その応用可能性について検討を進めていく.
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