研究課題/領域番号 |
19H00846
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80339241)
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研究分担者 |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
馬 騰 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10734543)
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00826274)
戸澤 譲 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90363267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単一イオンチャネル / バイオ二次元物質 / 脂質二分子膜 / 微細加工技術 |
研究実績の概要 |
脂質二分子膜の膜内に,膜に平行な方向に電圧を印加するための電極内蔵型膜支持体を,シリコン(Si)チップおよびテフロンフィルムの2種類の素材をベース材料として作製した.これらの支持体中での脂質二分子膜形成が,電極の存在によって影響を受けないことを確認した後,膜平行電圧印加に伴う膜電気特性の変化について,ノイズ電流レベル,膜抵抗,電気容量の観点から評価した.さらに,形成した脂質二分子膜中にナノ材料や生体イオンチャネルを包埋し,これらのハイブリッド膜に対する膜平行電圧の効果について検討した.その結果,フラーレン誘導体のPCBMドープ膜が示す膜貫通方向の光応答電流や,電位依存性Naチャネルが示す膜貫通電流が,ともに膜平行電圧の印加によって変調・増強されることを見出した(Faraday Discussion, in press,2022).この膜平行電圧による膜貫通電流の増強作用や,PCBMドープ膜の光応答電流については,どちらも興味深い現象ではあるが発生メカニズムが不明であったため,2021年度は,脂質二分子膜系に対する蛍光測定系を立ち上げ,これらの現象の作用メカニズムについて蛍光プローブを用いて検討した.また,上述の膜支持体では,チタン(Ti)を電極材料として用いていたが,膜平行電圧の印加に伴って,コンタクト部位が酸化チタン(TiO2)へと変化しやすいことも分かってきた.そこで,Ti電極上への白金(Pt)コーティングを検討した結果,電極の酸化防止に効果的であった.一方,TiO2はそれ自体が魅力的なチューブ状ナノ構造体であり,このナノチューブを利用したガスセンサーの構築(Langmuir, 2021)やナノバブル生成への応用についても検討した(Sensors and Actuators: B, Chemical, in press).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主テーマの一つである膜平行電圧という新概念について,「膜平行電圧」を導入した膜系の構築と,膜貫通電流に対する増強効果について論文発表を行っている.このような新概念の提案に対しては抵抗が大きかったが,論文採択に至った.残された課題としてはメカニズムの解明が挙げられるが,こちらの解析も予定通り進行している.また,派生研究として発生したTiO2ナノ構造体のセンサー応用についても論文発表に至っており,当初の予定通り,概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,構築した脂質二分子膜-蛍光測定系を用いて,膜平行電圧の作用メカニズムについて検討するとともに,その展開可能性について検討を進めていく.また,膜平行電圧系の汎用性を高めるため,電極内蔵型チップの作製プロセスのハイスループット化も進める.また,最終年度として,これまで得られた結果(hERGチャネル系,光応答性ナノ粒子系,膜平行電圧系)について総括する.
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