研究課題/領域番号 |
19H00847
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤田 淳一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10361320)
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研究分担者 |
嵐田 雄介 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30715181)
羽田 真毅 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70636365)
早田 康成 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80837469)
吉田 昭二 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90447227)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザー / 表面プラズモン / 走査透過電子顕微鏡 / 超高速可視化 / テラヘルツ波 / 電子波パルス / パルス幅圧縮 |
研究実績の概要 |
本研究では、フェムト秒オーダーの低加速超短パルス電子ビームを用いた走査型電子顕微鏡光学系を構築し、実空間におけるNEMSスイッチング素子の超高速変位や電荷やプラズモン等の移動な どの超高速現象を、走査電子顕微鏡のストロボ画像としての取得技術を創出しようとしている。 本年度は、年度内を通してコロナ禍のなかでなかなか思うように実験が進まなかったものの、なんとか装置の改造と光学系の整備が進展し、フェムト秒電子パルスの発生とともにパルス電子よる画像取得に成功した。市販の汎用高分解能走査型電子顕微鏡JSM-7200を大幅に改造して、レーザパルスの導入ポートと、鉛直打ち上げ用ミラーを設置した。ここから3ωの高調波フェムト秒レーザー(343nm)を導入し、ZrO被覆のTFE電子銃にレーザー照射する方式とした。熱電界放射(TFE)型電子銃の加熱温度を熱電子放出が停止する温度まで低下させ、レーザー励起による電子線パルスを生成する方式を用いた。導入したフェムト秒レーザーパルス出力を約360mW、繰り返し周波数を50kHzとしたときに、約500pAのぷらいまりーパルス電子線を得る事に成功し、本研究推進の上で大きなマイルストーンを築くことができた。また、フェムト秒レーザーを分岐して、CdTe結晶を通して約5Wのレーザーから2ピコ秒のパルスデュレーションで、1.1V/mの電界強度を持つTHz波を生成することにも成功した。こプラズモンと結合させて電子波エネルギーの圧縮を行うためのバタフライ型オリフィスも設計デザインと制作も完了している。 次年度は、これらのパルス電子波の詳細な発生状況と特性を検証するとともに、当初予定通りにTHz波による電子波圧縮を実証するとともに、プラズモン伝搬や接合面での電子拡散、さらには、ナノメカニクスの挙動解析などを超高速速走査電子顕微鏡技術の実証をすすめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェムト秒レーザー装置の改造と光学系構築が完成し、ようやくパルス電子波発生を実証することができた。今年もコロナの影響が長引くなかで高調波発生のための光学結晶の入手や、その他の関連制御装置の導入に遅延をきたしているものの、なんとか当初予定の電子パルス波を応用した超高速電子顕微鏡可視化実験を推進していくことができそうである。 超高速電子パルス発生自体は、ほぼ想定通りに実現したものの、ここに至るまでに技術的な難関があった。市販の高分解能電子顕微鏡の心臓部を改造を推進したために、製造企業としてはその内部構造開示は不可であった。ユーザーの立場からは装置の保証契約を破棄し、リスクを覚悟の上での独自の技術開発を行わざるを得なかったために、装置の開発に予想以上の時間を費やさざるを得なかった半面、今後いかような状況にあっても、自由に装置の改造と運用、保守ができる自信が研究推進に対して大きな支えとなる。 装置開発上の大きな山を越える事ができたので、この後は、当初予定に従い、THzの導入による電子波圧縮を実証し、真にfsでの走査電子顕微鏡超高速可視化技術開発にむけて研究を推進していく。
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今後の研究の推進方策 |
今般のコロナ禍の影響を受けたために、少々研究の進展が遅延しているものの、フェムト秒電子パルス波発生に成功したので、今後の研究方針は、当初予定通りに進展させていく。 今年度は、まずは、通常の時間遅延を応用したポンプ・プローブ法を用いて、フェムト秒時間分解での超高速現象をSEM像として取得できることを実証していく。同時に、THzプラズモン共鳴による電子波圧縮技術の検証をおこない、真にfs時間分解が可能であることを実証していく。これらの基本原理実証ができた段階で、実際のプラズモン伝搬や、PN接合面でのキャリア拡散の時間発展、さらには高速MEMSスイッチの動作可視化を実証していく。 また、多くの国際学会が今年もオンライン開催となっているが、こちらも準備ができ次第に精力的に参加して、学術的技術討論を通した研究開発を推進していく。
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