研究課題/領域番号 |
19H00853
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 芳明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60345105)
|
研究分担者 |
黒澤 昌志 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (40715439)
森 伸也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70239614)
藤田 武志 高知工科大学, 環境理工学群, 教授 (90363382)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 理工学部, 教授 (90409376)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 熱電材料 / シリコン / ナノ構造 / フォノン / 分子線エピタキシー |
研究実績の概要 |
本研究では、代表者の開発してきたナノ技術を基軸としてCaSi2ベースの人工層状超格子を開発することを狙う。まず、初年度にCaSi2薄膜をSi基板上にエピタキシャル成長させる手法の開発に取り組み、成長条件・薄膜成長法により物性が異なることを見出している。 本年度は、熱電出力因子の最適化の観点でCaSi2の薄膜の形成技術開発を行った。まず、プロセスにより物性が異なるが、その原因と考えられる薄膜の質・結晶構造の制御性を上げる必要がある。そこで、改良した超高真空対応の薄膜成長装置を作製し、単原子層で高度に構造制御して形成することに成功した。次に、これを用いて様々なプロセスで薄膜を形成し、その構造評価・熱電特性評価等を詳細に行い、プロセスと構造と熱電特性の三者の関係を緻密調べた。その結果、単原子層で構造制御した薄膜において、構造が変わると、熱電特性を変調することがわかり、それらの知見を多く得ることができた。今後、そこにある物理を明らかにしていく予定である。 また、Ca-SiGe系材料に展開をはかり、予備的にいくつかの試料の形成を行った。その結果、薄膜の大気中での劣化現象を見出した。薄膜の表面処理を行うことで、薄膜劣化が抑えられる予備知見を得ることに成功した。その表面処理プロセスを用いることで、予備的な熱伝導率測定にも成功している。今後、劣化現象を克服できるプロセスを確立し、それに対して、熱電特性評価を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置に改良を加えることで、初年度より大幅に制御性の高い原子層制御した薄膜形成法の開発に成功している。また、当初着手する予定であったディラック電子の観察には届いていないものの、最大の問題となる薄膜劣化現象に関して、克服可能となる表面終端プロセスの知見を得、そのプロセスを用いて、本来次年度の予定であった熱伝導率測定が可能であることを見出している。そのため、全体としては、おおむね順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の成果により、より制御性の高い成長法で薄膜形成する技術が開発できた。ただ、薄膜の劣化現象が存在し、完全に防ぐことは難しい。その克服となりえる表面処理を見出したが、この手法を確実に構築することを行う。その後、この劣化現象を抑えるプロセスをした試料に関し、詳細な構造評価・熱電特性評価を行っていく予定である。最終的には、様々な材料、薄膜を形成し、CaSi2ベースの人工層状超格子の開発を狙う。
|