研究課題/領域番号 |
19H00874
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岸野 克巳 上智大学, 上智大学, 特任教授 (90134824)
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研究分担者 |
野村 一郎 上智大学, 理工学部, 教授 (00266074)
大音 隆男 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (20749931)
富樫 理恵 上智大学, 理工学部, 助教 (50444112)
山口 智広 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (50454517)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 三原色集積型光デバイス / ナノコラム / InGaN / LED / レーザ |
研究実績の概要 |
多色集積ナノコラムLED二次元配列化の実験を進めた。pn接合型InGaN規則配列ナノコラム結晶のコラム径をコラム軸方向で変化させ実効屈折率分布を作り、光導波機構を内在化させた。波長490nmで半値全幅6.2nmの発光スペクトルを得て、電流増加による半値幅減少を得た。フォトニック結晶効果の発現によって、高い指向性の光放射ビーム特性が得られ、赤色域(波長638nm)でも高放射ビーム指向性LEDが得られ放射角±30°を観測し、薄膜構造LEDの±60°に比べて優れた放射ビーム指向性を得た。コラム周期を一定に保ちコラム径を系統的に変化させ、複数個のpn接合型ナノコラム結晶を作り、フォトニックバンド端のコラム径依存性を調べ、バンド端波長のコラム径制御性を示した。 コラム間隔が大きい規則配列ナノコラムの発光波長のコラム径依存性を調べた。コラム周期500-1100nmに対してコラム径を80-200nmに変化させ、コラム間隔は420-1020nmと広い。ナノコラム集団効果がないナノコラム系でも、発光色のコラム径制御性がみられ、今後、メカニズムの解明が必要である。自己形成法でTiマスクパターンSi基板上にGaNナノコラムを成長して、集団ナノコラムの選択成長を得て、LED結晶の領域限定法を確立した。 pn接合型ナノコラムのクラスタ配列、ハニカム配列の精密成長制御を得た。プラズモニックLEDを狙って、ハニカム格子ナノコラム側面にAu膜を蒸着して、波長570-600nmのLED発光を得た。表面プラズモンの理論共鳴波長は600nm近傍にあり、赤色域プラズモンLEDの可能性が示された。ハニカムおよびカゴメ格子配列ナノコラムのプラズモニック発光増強効果を電磁界FDTD)シミュレーションで解析し、ナノコラム間を金で埋め込んでプラズモニック構造を作製したところ、約4倍のフォトルミネッセンス発光増強を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コラム径によってナノコラムLED発光色を制御することで、発光面積5×5μm2の赤、緑、青、黄色(RGBY)ナノコラムμLEDを微小領域(20×20μm2)内へ作り込んだ集積ナノコラムμLEDユニットを同一基板上に二次元的に配列し、マトリクス電極によってμLED画素の独立駆動を行い、マイクロディスプレイパネルの初期的デバイスの基礎実験を進めた。フォトニック結晶効果との協調によって高指向性三原色μLEDの集積化までには解明すべき課題がある。その課題解決を狙って検討を進め、ナノコラム構造を系統的に変化させて発光色制御の実験データを集積し発光色制御メカニズムの学術的解明を進め、さらにフォトニックバンド端波長のナノコラム構造依存性の系統的実験によって基礎的資料の集積が進み、最終目的に向かって研究は期待以上に進展している。 コラム軸方向に実効屈折率分布を作りこみ、光導波機構を内在化させ、単色(青色、赤色)のナノコラムLEDにおいてフォトニック結晶効果を発現させ、高い放射ビーム指向性LED特性を実証した。フォトニック結晶効果はレーザ発振にも寄与し、光導波機構の内在化とともに、研究目的達成のための要素技術のひとつが実証された。TiマスクパターンSi基板を用いて集団ナノコラムの100μm角領域内の選択成長を実現した。 従来の三角格子配列に加えて、クラスタ配列、ハニカム格子配列ナノコラムの成長制御を行い、ハニカム格子配列では、コラム側面にAu薄膜を形成して、波長570-600nmのLED発光を実現して、プラズモニックLED作製法が確立された。ハニカム・かごめ格子配列のプラズモニックナノコラム結晶の発光増強特性の理論的解析を進め、フォトルミネッセンス測定では、プラズモン効果による約4倍の赤色発光増強が確認された。波長制御によってプラズモニック赤色LED実現が期待される水準まで研究が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
InGaN/GaNナノコラムの発光色制御とフォトニックバンド端波長の構造依存性の整合条件の解明に向けて研究を深化させる。成長条件を一定に保ち構造効果のみを抜き出すため、同一基板上でコラム径と周期を系統的に変化させた規則配列ナノコラム結晶を作製し、結晶評価を行ってメカニズムを解明する。 軸方向コラム径変化による光導波機構導入法を深め、活性層への光閉じ込めに適したナノコラム結晶の構造設計と作製条件の最適化を進める。ナノコラムへの均一電流注入、漏れ電流の抑制、ナノコラム間絶縁充填などの電流注入構造プロセス法の最適化を進め、フォトニック結晶効果による高放射ビーム指向性ナノコラムLEDの特性向上を進める。発光スペクトルの放射角度依存性によって、実験的にフォトニック結晶バンド構造測定し、理論解析との対照によってデバイス構造設計法を確立する。光励起レーザ発振実験を行ってレーザの構造条件の研究資料を得る。Si基板上ナノコラムでは、選択成長法でデバイス領域を限定しながら、マイクロLEDアレイを作製する。 クラスタ配列ナノコラム成長の高精度制御を行い、内部量子効率(IQE)を評価しながら成長最適化を進め、赤色発光効率の高効率化を探究する。InGaNバルクと多重量子井戸(MQW)活性層の比較を行い、自己形成コアシェルInGaN構造で表面再結合を抑制する。ナノ結晶効果によるマクロ欠陥抑制だけでは、点欠陥が増加する赤色域の効率低下には十分に立ち向かえないので、表面プラズモニクスによる発光増強効果の検討を加速させる。赤色発光増強に最適なナノコラムプラズモニック構造を理論と実験の両面から検証する。これまでのハニカム・カゴメ格子に加えて、クラスタ配列ナノコラムに検討範囲を広げ、表面プラズモンによるIQE増強効果の学術的に解明し、さらに高効率なプラズモニック赤色LED実現に向けて実験的検討を加速させる。
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