研究課題/領域番号 |
19H00882
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
直井 勝彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (70192664)
|
研究分担者 |
宮本 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30450662)
岩間 悦郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90726423)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | キャパシタ / 省エネルギー / 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
これまでの研究より、原材料であるLi3VO4(LVO)に対し、1)電気化学的処理(電気化学活性化)によるカチオン配列の乱雑化(cation-disorder化)、さらには 2)反応電子数を電位により制御する(反応電子数1以下)ことで、可逆かつ高速な充放電が可能な新規キャパシタ負極材料へ変換可能であることを見出している。しかしながら、この電気化学的な活性化には、LVO粉末を電極化し、リチウム金属と組み合わせてセルを構築し、充放電を事前に行うという煩雑なプロセスが必要であり、実用的な手法とはいえなかった。そこで、今年度はLVO粉末の状態で活性化処理を行う活性化LVOの直接合成に着手した。具体的には、あらかじめ固相で合成したLVOに対し、遊星ボールミルを用いて粉砕することで活性化させることを試みた(メカニカル活性)。結果、36時間のボールミル後のXRDから、メカニカル手法により直接活性化したLVO(以下、活性化LVO)のXRDピークは、電気化学活性化手法に近いプロファイルへと変化しており、cation-disorder化していることが示唆された。また、V K-edgeのXAFS測定結果からも、XANES領域のピークのブロード化が確認され、cation-disorder化により活性化LVO中のV原子が様々なエネルギー準位を持つように変化していることがわかった。この結果と対応するように、充放電カーブは活性化によりプラトー形状からスロープ形状へ変化し、またdQ/dVにおける充放電ヒステリシスも0.1V以下に低減されること、さらには充放電が高速化することを確認した。以上より、開発したメカニカル活性化LVOが、電気化学的活性化LVOをキャパシタ負極材料として代替可能であることを示すことに成功している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで行ってきた電気化学活性化はプロセスが煩雑化であり、材料の実用面で大きな障壁があったが、上記メカニカル活性化手法の開発によりこの障壁を一つ越えたことから、研究は順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で示したように、メカニカル活性化手法により、煩雑な電気化学活性化プロセスの簡略化・材料の直接合成の観点から、で大きな進展があった。今後はキャパシタ材料としての実用性評価として、本材料の充放電サイクル安定性・保存特性といった、安定性の評価を行っていく方針である。また、メカニカル活性化には遊星ボールミルの使用を前提としており、将来的な材料合成の大型化を見据え、より簡略な合成手法を模索していく予定である。また、もうひとつのキャパシタ負極材料候補であるカチオン欠陥型材料Y2Ti2O5S2についても、キャパシタ特性評価・サイクル安定性評価と合わせて評価を進めていく予定である。
|