研究課題/領域番号 |
19H00888
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小堀 康博 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (00282038)
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研究分担者 |
大西 洋 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20213803)
池田 浩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30211717)
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70418698)
松木 陽 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (70551498)
濱田 守彦 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70827948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一重項分裂 / 電子スピン分極 / 時間分解電子スピン共鳴 / 光電荷分離 / 有機太陽電池 / 分子振動効果 / 励起子解離 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
単一の光子から複数の三重項励起子を生むシングレットフィッション(一重項分裂)は有機薄膜太陽電池において飛躍的に高い光エネルギー変換効率をもたらす現象として世界的に注目されている。本研究では、時間分解電子スピン共鳴法をベースに世界最高性能の空間分解能を持つ中間体構造解析の画期的ツールとして独自に開発してきた「電子スピン分極イメージング法」を主たる手法とし、時々刻々と変化する多重励起子や光電荷分離状態の立体配置とその分子運動効果をナノ秒領域の三次元動画 (映像化)として実験的に特徴づけた。分子内シングレットフィッション系では、強く相関した多重励起子からの電子的相互作用による束縛を解く際にかかるねじれ振動モードと周波数を具体的に特徴づけるとともに、それによる解離多重励起子の立体構造の変化も明らかにした。さらに励起子解離による立体構造変化の分子論起源は不明であった。本研究では、電子構造論に基づき双性イオン構造による束縛励起子対からのテラヘルツ振動による開放として、具体的に記述することもできた。動物による磁気コンパスの働きを持つものの起源と考えられているクリプトクロムにおいては、光誘起電荷分離過程で生成する電荷分離状態の立体構造と配位水のゆらぎ分子運動による電子伝達機構の詳細を明らかにした。以上より、結晶性と非晶性を併せ持つ有機エレクトロニクス薄膜や生体タンパク質のエントロピー効果と運動による電子的効果を用いるデバイス効率飛躍的向上化の知的基盤を獲得し、有機薄膜太陽電池開発で課題となっている超高効率化への指針を提示することができるようになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、時間分解電子スピン共鳴法をベースに世界最高性能の空間分解能を持つ中間体構造解析の画期的ツールとして独自に開発してきた「電子スピン分極イメージング法」を主たる手法とし、時々刻々と変化する多重励起子や光電荷分離状態の立体配置とその分子運動効果をナノ秒領域の三次元動画 (映像化)として実験的に特徴づける。我々はすでにこの映像化による電荷分離状態などの中間体構造解析の手法を確立しただけでなく、励起子解離による四電子系によるスピン量子効果で生成するスピン相関三重項対モデルを確立している。これを駆使し、世界ではじめて分子内励起子分裂で生成する多重励起子の解離が、分子内の特定の振動モードによる構造変化によって極めて高い量子収量で起こることを明らかにした。この他、パルス電子スピン共鳴法を用いた多重励起子スピン量子操作や、有機薄膜太陽電池における光キャリア生成に対する格子振動効果の観測や立体構造の解明など、当初の計画を上回るペースにて研究の進捗が加速化している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、電子スピン分極イメージング法とパルス電子スピン共鳴法を駆使し、高性能有機薄膜太陽電池における光電荷分離状態の立体構造解析と不均一運動性の分類化をすすめる。励起子分裂系においては、薄膜において生成する多重励起子の解離機構の詳細を明らかにするとともに、四量子ビット系による量子演算操作を試みる。また、新たに金属有機構造体(MOF)による励起子分裂とそれらの解離過程に対する分子論的解明の研究に着手している。MOFによる分子運動正の制御とそれに伴う量子演算操作系の構築にも取り組む。また、三重項-三重項消滅による光アップコンバージョンの超高効率化をねらいとする多重励起子の分子運動性によるスピン操作も進めている。
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