研究課題/領域番号 |
19H00900
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小澤 岳昌 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40302806)
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研究分担者 |
尾崎 倫孝 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80256510)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光操作 / RNA / 酵素 / 標準添加法 |
研究実績の概要 |
「生細胞内RNAの分子数および得意配列反復回数計測技術の開発」では、様々な反復配列を標的とするカスタムメイドmPUMを効率的に作成できるよう、Golden Gate Assembly法を利用してカスタムメイドにmPUMを作成できるmPUM単位リピート構造ライブラリを構築した。ハンチントン病の原因とされているCAG反復RNAを標的とするmPUMの作成を行った。具体的には5’-CAGCAGCA-3’、 5’-AGCAGCAG-3’、 5’-GCAGCAGC-3’をそれぞれ認識し結合する3種類のmPUMを作成した。これらとCAGリピート合成RNAを混合し電気泳動したところ、RNAとmPUMが結合し分子量が増大したバンドが検出された。平行して3次元観察顕微鏡の構築を行った。レンズアレイを倒立顕微鏡の検出光学系にリレー系を組み、カメラレンズとしてレンズアレイを採用したプロトタイプを作成した。本顕微鏡を用いることで、単一イメージセンサー上に同一サンプルの像を複数結像することができる。 「光活性化型酵素を用いたIn vivo標準添加法の開発」では、PI-Lucの大量合成と精製に関する条件検討を行ってきた。T7 Express lysY/Iq Competent E. coli (High Efficiency)及びpColdI発現ベクターを用い、かつタンパク質のフォールディングを助けるためのシャペロンタンパク質の共発現を試みた結果、可溶性画分における目的タンパク質の量を著しく増やすことができた。可溶性画分で取れたPI-Lucを、pColdIペクターによりN末端に融合された6xヒスチジンタグを用いて、アフィニティークロマトグラフィーにより精製を試みている。ゲルろ過クロマトグラフィーによる分画を行い、純粋な全長PI-Lucを得ることができる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「生細胞内RNAの分子数および得意配列反復回数計測技術の開発」では、今後の汎用化に向けてmPUM単位リピート構造ライブラリを作成した。これまでmPUMを作成する際には標的RNA配列を元に複数の変異導入箇所を決定し、部位特異的変異導入を繰り返すことで作成していたため、1種類のmPUMを作成するためにかなりの時間を要した。このmPUM単位リピートライブラリを作成したことでmPUM作成の迅速化が期待でき、今後の研究の進展が大きく進むことが期待できる。 「光活性化型酵素を用いたIn vivo標準添加法の開発」では、無細胞実験による標準標準添加法の原理検証及び細胞内発現系による標準添加法の実証に向けて、PI-Lucの大量合成及び精製条件を検討した。大腸菌とpColdI発現ベクターを用いた発現系をベースに、DnaK-DnaJ-GrpEとGroES-GroELの二種類のシャペロンを共発現することにより、可溶性画分において十分なPI-Lucを得られることができている。PI-Lucの大量精製に見通しがついており今後の研究の加速が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
プローブの作製では、前年度までに作成したmPUMを用いて、標的RNAの細胞内可視化検出プローブを構築する。当初計画通りmPUMの両末端に二分割黄色蛍光タンパク質断片を融合し、その発現ベクターを培養細胞に導入して細胞内でプローブを産生する。細胞には同時に標的RNAを産生するベクターも同時に導入する。この細胞を蛍光顕微鏡で観察することで標的RNAの細胞内局在や反復RNA配列の繰り返し数を評価する。 3次元観察顕微鏡の構築では、前年度までに作成した検出光学系のレンズアレイの各レンズに厚さの異なる位相物質を配置し、サンプルの異なる深さ位置の像がイメージセンサー上に構築されるようにする。得られた複数のイメージをスタックすることで立体像を得る手法を確立する。 全長のPI-Lucの精製において、6ヒスチジンタグを用いたアフィニティークロマトグラフィーに加えて、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量に基づいた精製を行う。これにより十分量の純粋な全長PI-Lucを得た後、分光光度計を用いてPI-Lucの光刺激特性を考察する。即ち、規定の光量を照射したときに、何%のルシフェラーゼ不活性が生じるか定量的に評価する。そして、細胞実験による標準標準添加法の原理検証を行たのち、問題がなければ、細胞内発現系による標準添加法の実証を進める。
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