研究課題
単環状や多環状・かご型などの複雑な分子トポロジーをもつ環状高分子(環状鎖)は、線状高分子(線状鎖)の貫入を許し線状鎖を拘束するため、従来の管模型(レプテーション)で表現される絡み合いとは全く異なる未知の動的挙動を呈する。このような少量の環状鎖を線状鎖に添加した系(環状混合ソフトマテリアル)における「環状鎖の環の大きさや導入量」という系の自由度に関する基礎科学は、理論・シミュレーション・実験のいずれについてもほぼ手つかずの状態で残されてきた。本研究は、多様な分子トポロジーをもつ環状鎖の線状鎖との相互作用を分子論的に明らかにし、この新しい系でのダイナミクスの基本原理の構築を行う。研究3年目である令和3年度は、多環状ポリスチレンを添加したスチレン系熱可塑性エラストマーの環状混合ソフトマテリアルについて「力学測定による動的架橋点の検証と超弾性の実現」に取り組んだ。環状鎖の添加により破断応力と靭性の増加が見られた。さらに、網目中に環状鎖が埋め込まれた系について、環状混合ソフトマテリアルの延伸変形挙動の分子シミュレーションを行なった。その結果、環状鎖の環の大きさや導入量の増加とともに応力が増加し、環状鎖が動的架橋点として作用し網目を補強することがわかった。また、新たな環状鎖として、かご型ユニットが高密度に配置されたグラフト高分子を合成し、この分子の分子運動性が、線状・環状グラフト高分子に比べて低下することも明らかにした。この新規環状鎖の環状混合ソフトマテリアルとしての応用が期待される。「延伸状態下での環状混合ソフトマテリアルの3次元ナノ動的観察と計算機シミュレーションとのデータ同化による環状鎖の分子スケールでのダイナミクスの可視化」については、コントラスト増強(電子染色)を行わず環状混合ソフトマテリアルの相分離構造の延伸変形挙動をその場観察する電子顕微鏡手法を確立することができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 4件、 招待講演 7件)
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