研究課題/領域番号 |
19H00911
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大内 誠 京都大学, 工学研究科, 教授 (90394874)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 配列 / 共重合 / 高分子 / 機能 / 連鎖重合 |
研究実績の概要 |
2020年度は2019年度に見出したジビニルモノマーの選択的環化重合とアミン添加による切断によるオールアクリルアミド交互配列制御ポリマーの合成について,ジビニルモノマーの分子設計を見直し,導入している電子求引性基をニトロ基からトリフルオロメチル基に変更することで,環化重合の選択性とアミンによる変換効率を維持しながら,重合が遅い,重合率が高くならない,といった課題を解決した。これにより,効率的に交互配列制御ポリマーを合成できるようになり,交互配列による撥水性の発現,幅広い温度応答性高分子の開発などにつながった。 また,単独重合性がなく交互共重合は可能なモノマーであり,交互共重合後に汎用モノマーユニットに変換できるモノマーとして,サッカリンを側鎖に有するメタクリルアミドを合成した。このモノマーの交互共重合性挙動は,強い電子求引性基と共役構造に基づいており,他のメタクリルアミドとは全く異なる共重合性制御挙動を示すことがわかり,高分子分野のトップジャーナルの一つであるPolymer Chemistryに掲載された。また,このモノマーのサッカリンアミド側鎖はモノマーの時点では安定であるが,共重合体に組み込まれた後はアルコールと容易に反応し,メタクリレートユニットに定量的に変換できることを明らかにした。これにより,様々な側鎖を有するメタクリレートとスチレンの交互共重合を簡便に合成できるようになり,対応する1:1の統計的共重合体も合成し,交互共重合が低いガラス転移温度を示すことを明らかにした。また,スチレン以外にジエンでも交互共重合が進行することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
配列を制御する手法を見出し,さらに既存のモノマー単位を用いて様々な交互配列制御ポリマーの合成に成功し,配列制御による特性も発現できている。また,モノマーよりも重合後に側鎖の反応性が高くなり,簡便かつ定量的に繰返し単位ユニットを変換できたことは,高分子合成手法として前例がなく,今後これまで合成できなかった高分子の合成が期待される。よって計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で電子求引性基の導入は,交互共重合制御と重合後の変換に有用であり,このコンセプトを活かして,交互グラフト共重合体,分解性交互共重合体,ABC交互配列共重合体などの合成を検討する。また,リビング重合系へ展開することで,配列制御セグメントを含むブロック共重合や多分岐高分子を合成する。
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