研究課題/領域番号 |
19H00913
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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研究分担者 |
西原 洋知 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80400430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラフェン / エッジサイト / キャパシタ / 劣化 |
研究実績の概要 |
エッジサイトのない単層グラフェンから構成される新規メソ多孔性カーボン「グラフェンメソスポンジ」は、一般的な有機電解液を用いた対称キャパシタを組んだ場合、室温では4.4 Vまでの非常に高い耐電圧を示すことがわかっている。電気二重層キャパシタ電極材料としてグラフェンメソスポンジがこのように高い耐久性を発揮する理由を詳しく検討した。複数種類の活性炭やカーボンブラックに加え、還元酸化グラフェン、ゼオライト鋳型炭素など様々な比較物質を用い、炭素の構造と初期劣化反応との関係を系統的に調べた結果、正極においてはプロピレンカーボネートやアセトニトリルなどの溶媒分子がカーボンのエッジサイトと反応し、負極においてはこれらの溶媒分子がカーボンのベーサル面と反応していることが判 明した。しかし、負極の劣化反応は正極よりも顕著ではないため、エッジサイトが無い単層グラフェン多孔体を電極活物質に利用する方向の妥当性が確かめられた。また、シームレス電極を単層グラフェンで実現するため、化学気相蒸着をしつつTG-DSC-MSを測定し、炭素被覆の開始温度を正確に調べた。さらに、化学気相蒸着が起こるある一定の温度での炭素堆積量の経時変化をモニタリングすることで、グラフェン1層での被覆が完了する反応時間を決定することができた。また、単層グラフェン多孔体の欠点である低キャリア密度の問題を克服するため、窒素およびホウ素をドープした単層グラフェン多孔体の調製も検討した。まだ材料の最適化は完ぺきではないが、窒素を含有する高比表面積の単層グラフェン多孔体のプロトタイプは調製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の検討により、電気二重層キャパシタのカーボン電極表面と電解液との反応メカニズムに関する理解が従来よりも大幅に進み、本研究の方向の妥当性が証明されると同時に補完された。従来の研究では、複雑なカーボン材料のどの部位が正極および負極のそれぞれにおいて、どの電解質分子とどのように反応しているのか、系統的な研究がなされていなかったが、本研究により活性炭、カーボンブラック、還元酸化グラフェンなど非常に異なる性質の様々なカーボン材料に共通する劣化因子を正極と負極のそれぞれにおいて明らかにできたことは、学術的に価値が高い。さらに、アルミナ表面とメタンとの高温での接触によるグラフェン形成機構の大略が明らかとなり、本研究の目的である「エッジサイトのない単層グラフェンから成るシームレス電極の作製」の条件探索の目途が付いた。また、目的の1つに掲げている「ヘテロ原子ドープによる容量向上と耐劣化性維持の両立の検討」の実現のために必要となる、ヘテロ原子のドープ方法についても検討が進み、目的とする材料を調性できる目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はシームレスな多孔体電極を、単層グラフェンで実現することに取り組む。昨年度に得られた知見を用いれば、グラフェンの積層を防ぎより高比表面積なシームレス電極が得られる見込みである。また、昨年度に引き続き窒素及びホウ素がドープされた高比表面積単層グラフェン多孔体の調製にも取り組む。最適条件はほぼ同定できているので、達成できる見込みが高い。得られた材料を用いて対称キャパシタを構築し、基礎的な性能評価および加速劣化試験による耐久性評価を行う。また別の方策として、エッジサイトで分解しない安定なイオン液体の利用も検討する。グラフェンメソスポンジとは異なり、エッジサイトを大量に含有するが、単層グラフェンからなり高表面積のゼオライト鋳型炭素を安定な電極材料として利用できれば、高容量かつ高速動作可能なキャパシタが実現できると期待できる。
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