無機ナノ粒子の合金化は、基金属の性質を制御するだけではなく、機能の複合化や単一金属だけでは発現することのない新規特性を与える手法として注目されている。本研究では、dバンドセンターやフェルミ準位で決定される希少貴金属の優れた物性や触媒能を凌駕する新奇ナノスケール金属相の開拓を目的とした。具体的には、低周期dブロック金属元素を基盤に、13~15族pブロック元素との化合物形成により定常的・連続的に電子構造を変調した新奇な金属化合物ナノ粒子群を創製し、金属化合物ナノ粒子の浅いフェルミ準位を利用し、pブロック元素を低酸化還元電位金属に置換することにより、未踏合金ナノ粒子群を合成した。2019年度は、貴金属の合金化の新奇手法として、単分散なパラジウム-リン(Pd-P)合金ナノ粒子を出発物質としたPd基合金ナノ粒子の合成手法を利用した。これまでに、B2-PdInナノ粒子では、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因する吸収ピークが可視領域に確認されており、吸収ピークの極大波長はB2-PdInナノ粒子の粒径の増大とともに長波長側にシフトし、金属ナノ粒子のLSPRに特徴的な傾向が観測されいる。B2-PdInナノ粒子のLSPR発現が、その結晶構造、すなわち、11族元素に類似したバンド構造に由来であることに着目し、B2結晶構造をもつ12族元素とPdとの合金ナノ粒子として、B2-ZnPdを同様の手法で合成した。その結果、B2-ZnPdナノ粒子の合成に成功し、可視領域にLSPR吸収を示すことが分かった。すなわち、11族元素に類似したバンド構造をもつB2-Pd基合金が、新たに可視領域にLSPR吸収を示すナノ粒子群であることを実証した。
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