バクテリアの一酸化窒素還元酵素はヘム鉄と非ヘム鉄よりなる複核錯体を反応中心として、以下の酵素班のを触媒する:2NO + 2H+ + 2e- --> N2O + H2O。緑膿菌の一酸化窒素還元酵素(cNOR)と髄膜炎菌の一酸化窒素還元酵素(qNOR)を研究対象とした。今までに、cNORの酵素反応は2つの短寿命反応中間体を生成を ふくむ三段階の素反応で進む事を明らかにし、第一反応中間体(マイクロ秒の寿命)は、一分子の NOが非ヘム鉄に配位した状態であると提案した(本年度に論文として発表した)。一方、第二反応中間体(数 ミリ秒の寿命)は、電子状態と配位構造の決定を様々な手法で試みたが、この中間体は赤外吸収スペクトル並びにESRスペクトルに不活性であり、いまだに確定できていない。現在では、一分子のNOがヘム鉄と非ヘム鉄に架橋した構造の可能を考えている。 さらに、低温電子顕微鏡法により、qNORの二量体と単量体の構造解析に成功し、両構造を詳細に比較した。二量体形成の接触ヘリックスの構造が、単量体では揺らいでいることが明らかになった。このヘリックスは酵素反応に必要なプロトンの供給経路を形成していることから、この構造揺らぎの結果、単量体は二量体に比して極めて活性が低いと結論した。 NORが好気呼吸酵素であるチトクロム酸化酵素の祖先型酵素に着目して、病原菌の呼吸阻害による抗菌薬の設計を目指して、cNORとqNORの阻害剤検索を行った。いくつかの候補化合物を見出したので、低温電子顕微鏡法を用いて、その中の有力な化合物とcNORの複合体の構造解析を行った。解析が進行中である。加えて、qNORの酵素反応のなかで電子伝達機構の解明を目指して、このステップを阻害する化合物とqNORの構造解析を行った。阻害機構の解析と合わせて、現在論文作成中である。
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