研究課題/領域番号 |
19H00929
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伏信 進矢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00302589)
|
研究分担者 |
藤田 清貴 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (20381189)
石渡 明弘 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70342748)
隅田 泰生 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (70179282)
新地 浩之 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (70770155)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 糖質関連酵素 / 結核菌 / アラビノース / 阻害剤 / 可視化ツール |
研究実績の概要 |
鏡像体アラビナン分解酵素のうち、2種類のEndo型酵素(EndoMA1, EndoMA2)と2種類のExo型酵素(ExoMA1, ExoMA2)の機能解析と、結晶構造解析を進めた。その際、新たに有機合成した基質アナログの有効性が示された。さらに、EndoMA1の結晶構造で発見した新規CBMの金属ナノ粒子(GNP)を用いた解析に着手した。 EndoMA1とEndoMA2の基質特異性解析を合成基質を用いて行った。これまで合成に成功していた22糖(A22BβT)に加え、3種類の合成オリゴ糖(A9LT, A8BT, A5BT)を基質として、HPAEC-PADとHPLCを用いた解析により、両酵素の詳細な基質特異性を明らかにすることができた。EndoMA1はEndoMA2より小さなフラグメントを生成すること、EndoMA2は分岐の隣の結合を切断できること、などが分かった。昨年度発見したExoMA2(MA1061)の酵素学的性質や基質特異性も合成基質を用いて詳細に明らかにした。 結晶構造解析では、EndoMA1のA9LTとの複合体構造決定に成功した。これにより触媒ドメインの基質認識と触媒機構が明らかになった。EndoMA1の触媒残基はAsp33(求核触媒)とAsp51(酸/塩基触媒)であることが、結晶構造と変異体解析により示された。さらに、C末端側のβ-サンドイッチドメインにD-アラビナンのオリゴ糖が結合していたことから、このドメインが新規な炭水化物結合モジュール(CBM)であることが示唆された。これまでの検討により、EndoMA1を用いて処理したD-アラビナンを結合させたGNPが有効であることが分かっていた。部分分解D-アラビナン結合型GNPを用いたところ、野生型EndoMA1および触媒残基変異体(D51N)が明確な凝集活性を示したことから、CBMが機能することにより多価の結合が起こっていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2種類のExo型酵素(EndoMA1, EndoMA2)と2種類のExo型酵素(ExoMA1, ExoMA2)について、合成基質を利用した機能解析と構造解析が一気に進展した。特に、D-アラビナン基質は複雑な分岐構造を持っており、エンド型の分解酵素がそのどこを切るかは全く分かっていなかったが、この解析によりほぼ全てが解明された。 結晶構造解析においても、EndoMA1で新規なCBMであると予想されるドメインが発見できた。このドメインは既知のCBMファミリーのいずれにも相同性を示さないため、新規ファミリーが作られると予想される。可視化ツール開発にも進展が見られ、GNPにD-アラビナンを結合させることにより、簡便かつ明確な結果が得られるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
4種類のD-アラビナン分解酵素のうち、EndoMA2とExoMA2は結晶構造が得られていないので、今後結晶化をさらに進める。ExoMA1の複合体構造を得るために、各種の合成基質の結晶へのソーキングあるいは共結晶化を行う。 ExoMA2はGH116ファミリーに弱い相同性を示すためにアノマー保持型の触媒機構を有すると予想されるが、これまで解析されているGH116のβ-グルコシダーゼとは配列相同性が極めて低いため、ExoMA2の触媒機構をNMRを用いて明らかにしていく。 EndoMA1のGNPによる解析手法が確立できたため、今後はEndoMA1の変異体を多数作成して、可視化ツールを用いた解析を行っていく。触媒ドメインの活性中心だけでなく、基質結合部位、推定CBMのリガンド結合部位などの変異体を作成してGNP解析に用いる。
|