研究課題/領域番号 |
19H00931
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榊原 均 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20242852)
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研究分担者 |
小嶋 美紀子 (小嶋美紀子) 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専門技術員 (10634678)
西川 俊夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90208158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サイトカイニン / 植物病原菌 / FASオペロン / Rhodococcus fascians |
研究実績の概要 |
R. fasciansのFAS遺伝子の様々な組合せを大腸菌内で発現させる系を作製し、その培養上精からサイトカイニン含有画分を固相抽出法により粗精製し、質量分析によりその性状を解析した。 その結果、FAS2, FAS3, FAS5の3つの遺伝子により質量42の修飾がイソプレン側鎖に起こることでNC273が生じ、さらにFAS1の働きにより質量18の修飾が側鎖に起こることでNC289が生ずることが明らかとなった。 FAS2, FAS3, FAS5による修飾についてさらに解析を進めた結果、FAS5がイソプレン側鎖を脱水し、FAS2, FAS3によりピルビン酸由来のアセチル基を付加することを明らかにした。FAS5はサイトカイニン分解酵素に構造が類似しており、他研究では分解酵素として働くと報告されているが、そのモデルを覆す結果を得ることができた。 FAS1による質量18の修飾は、FAS1がP450酵素であることから水酸基付加であると予想された。そこで大腸菌発現系を用いてFAS1の組換え酵素タンパク質を調製し、試験管内で酵素的にNC289を大量合成した。そのNC289のNMR解析と質量分析によるフラグメント解析により、水酸化付加位置の特定に成功した。 さらにR fasciansの液体培養を行い、濾過滅菌後の培養液上清に含まれるサイトカイニンの解析を行なったが、すべてのサイトカイニン様分子は検出限界以下であった。その後の解析で今回の培養条件では、FASオペロンの発現量が想定よりも低かったことが判明したため、培地条件のさらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、FAS2, FAS3, FAS5による修飾の実体とその反応機構を明らかにすることができた。FAS5がサイトカイニンの分解ではなく、修飾に働くことを明らかにできたことは特筆すべき成果である。また、FAS1による水酸化とその修飾位置についてもNMR解析を用いて同定できた。一方で、R fasciansの液体培養上清からのそれら新奇サイトカイニン(NC273, NC289)の検出同定には至らなかった。これもさらなる条件検討により克服できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
R fasciansの液体培養上清からの新奇サイトカイニンの検出同定を、研究協力者の工藤博士(理研つくば研究所)協力を得てすすめる。これまでの合成培地ではなく、植物由来のOat bran brothを用いての検討をまずは行う予定である。さらに、R fasciansのタバコへの感染実験を行い、感染植物からのNC273, NC289の検出を試みる。 NC289を有機化学的に合成し、サイトカイニンとしての活性評価を行うなど、この分子の機能についての解析を進める。
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