研究課題/領域番号 |
19H00933
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅彦 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20283575)
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研究分担者 |
濱田 隆宏 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (20452534)
大島 一正 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50466455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 虫こぶ / 虫こぶ形成昆虫 / シロイヌナズナ / 極性輸送 / 膜交通 / ホスホイノシチド / 発現比較 / 微小管 |
研究実績の概要 |
虫こぶ形成昆虫の持つ植物形態形成操作能力を利用して,ホスホイノシチドの一種,ホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸 [PI(3,5)P2]によって制御される植物細胞形態形成の分子機構を総合的に解明することを目指して研究を行った。 具体的には,植物の形態形成過程を,(1) 受容体による外部からの刺激の受容,(2) 細胞内シグナル伝達,および転写・翻訳制御,(3) 細胞骨格の制御,(4)極性分泌の調節,の4つの素過程に分割して,それぞれの過程を下記の研究項目を実施することで解明する計画で,本年度は,その中でも「形態形成因子およびそれらの受容体の同定」を行った。 虫こぶ誘導昆虫3種,ヌルデシロアブラムシ,ヒサカキホソガ,タマホソガについてのRNAseq解析の結果にシロイヌナズナのアノテーションをつけ,①虫こぶ形成期に発現上昇した物質で,②植物のタンパク質に類似し,③分泌シグナルをもつを満たすタンパク質を抽出し,その中から,③の条件を満たす分子群を抽出した. それらの分子群のうち,虫こぶ誘導昆虫3種を使用したAb-GALFA法によるシロイヌナズナで著しく発現変化するものを探索し,昆虫キー分子として,分泌タンパク質Cysteine-Rich Secretory Protein, Antigen5, and Pathogenesis-Related 1 (CAP)を同定した.CAPは,分泌性のシステインリッチタンパク質で,原核生物から植物,動物などの真核生物まで広い生物種に高度に保存されているが,その機能については,ほとんど不明である.そこで,シロイヌナズナ根に昆虫CAPの保存領域の合成ペプチドを処理すると,部分的に虫こぶ様構造が再現された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書で提案した実験計画のうち,(a)エフェクターおよび受容体の同定について,エフェクター候補として,分泌タンパク質Cysteine-Rich Secretory Protein, Antigen5, and Pathogenesis-Related 1 (CAP)を同定した.また,CAPペプチドと結合する受容体候補として,LRR型受容体キナーゼ候補を数種類同定し,それらの過剰発現シロイヌナズナ形質転換体を作成し,CAPペプチドに対する感受性の変化を観察した。現在,それらのうちの一つが,CAPペプチドに対する感受性の増加を示したので,さらなる解析を進めている。 本研究ではFAB1と微小管の相互作用をより詳細に解析することを目的としている。今年度は両者の相互作用を担うと予測されるタンパク質の可視化植物体及び、変異体バックグラウンドでの観察に用いる植物体の作製を行った。 さらに,本研究ではFAB1と微小管の相互作用をより詳細に解析することを目的としている。今年度は両者の相互作用を担うと予測されるタンパク質の可視化植物体及び、変異体バックグラウンドでの観察に用いる植物体の作製を行った。 また,虫こぶ誘導時特異的に高発現している転写産物を絞り込み,虫こぶ誘導のごく初期に働くエフェクターである可能性が考えられる配列を特定した.さらに,これら配列の機能解析を虫こぶ誘導昆虫で行うため,産卵前のホソガ科メス成虫に CRISPR-Cas9 タンパク等をインジェクションして卵巣内の卵のゲノム編集を行う技術の確立を目指し,麻酔とインジェクション過程の最適化を行なった.その結果,麻酔,インジェクション後でも高確率で産卵および次世代の虫こぶ誘導が確認できる技術が確立でき,2020年度から本格化させる機能解析に向けて非常に大きな進展が得られた.
以上のように,実験計画がおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降は,CAPペプチド受容体候補の解析をすすめるとともに, (b)PI(3,5)P2によって制御される形態形成シグナリング経路の解析。 (c)PI(3,5)P2によって制御される微小管と後期エンドソームとの関係と極性分泌の解析
を予定通り,進めていく。
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