研究課題
植物は体内の様々な細胞に膜輸送体を発現させ、栄養の吸収・輸送や毒性物質の排出・隔離を行っている。その際、細胞の片側の細胞膜に輸送体を配置することで方向性を持った輸送を可能にしている。本研究の目的は、輸送体が根の各細胞で土壌および中心柱に面した側の細胞膜に偏在するメカニズムを理解することである。そのため、対照的な偏在性を示すホウ酸輸送体をモデルとし、細胞内小胞輸送の方向決定メカニズムを中心に解明する。本年度は、ホウ酸トランスポーターBOR1は対象とした順遺伝学的解析を進めたほか、BOR1およびNIP5;1のアミノ酸配列の解析を進め偏在性に重要な新たな領域を同定した。BOR1およびホウ酸チャネルNIP5;1の相互作用タンパク質の探索も進めた。現在までに決定的な結果は得られていないが、GSTプルダウンとLC-MS/MS質量分析の実験系を確立し、相互作用候補タンパク質のリストアップに至っている。また、逆遺伝学的解析により偏在性に重要と考えられる膜交通に関するタンパク質の寄与を解析した。輸送小胞への積荷タンパク質の選別に重要なクラスリンアダプタータンパク質 (AP) 複合体のうちAP2については、BOR1と結合し恒常的なエンドサイトーシスを促進することで、偏在性の維持において重要な役割を果たすことを論文発表した (Yoshinari et al. Plant Physiology 2019)。AP2がNIP5;1のエンドサイトーシスと偏在性に寄与することは本研究開始前に発表しているが、NIP5;1との直接結合するかどうかは明らかでなかった。そこで本年度はNIP5;1とAP2複合体の結合を解析する実験系を確立した。逆遺伝学的に解析した他の候補因子については、明確な重要性は見出せなかった。
3: やや遅れている
相互作用解析について各実験系のセットアップに試行錯誤が必要であった。順遺伝学的な解析では、BOR1の偏在性に以上のある変異株のほとんどが種子の形成に異常を持ち、継続が困難になった。
相互作用解析については、分担研究者の高須賀氏の研究室との連携を深めているため、今後進展が見込める。順遺伝学的解析については、偏在性の有無の判定がしやすい新たなスクリーニング系を立ち上げる。
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Plant Physiology
巻: 179 ページ: 1569-1580
https://doi.org/10.1104/pp.18.01017
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