研究課題/領域番号 |
19H00936
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (60344123)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホーミングエンドヌクレアーゼ / ゲノム編集 / 23S rRNA |
研究実績の概要 |
令和元年度は、好熱菌R. marinusの全ゲノム解析並びに23S rRNA遺伝子中イントロンの機能解析を行った。特にホーミングエンドヌクレアーゼ(I-RmaI)の生化学解析を行い、切断部位の認識配列について検討した。より具体的には、I-RmaI遺伝子を含まないタイプのR. marinus 23S rRNA遺伝子を構築し、実験に供した。 またI-RmaIの大腸菌発現系をいくつか構築した。I-RmaIの遺伝子は、Nativeのものと大腸菌型にコドンを合わせて全合成したものを用いた。精製タグ(Hisタグ)の位置、培養温度、誘導のタイミング等を検討した結果、タグ位置によらず、T7プロモーター誘導系、42°Cで比較的良好な発現が見られた。 次いで、大腸菌を宿主に異種発現させたI-RmaIを作用させたところ、23S rRNA遺伝子配列の断片化が確認された。得られた断片についてサンガー法により配列を決定したところ、予想通り、I-RmaI遺伝子の挿入部位が切断箇所であることが判明した。 I-RmaIは好熱菌由来であり、ゲノム編集ツールとしてI-RmaIを利用するには、I-RmaIが大腸菌の倍加時間内に速やかに発現し、反応する必要がある。そこで、進化工学的な低温適応などの実験系構築に向け、蛍光性の基質を用いた活性スクリーニング系の構築すべく、いくつかの蛍光プローブの付いたオリゴDNAを合成し、活性測定系に供した。 高機能23S rRNA遺伝子を取得するため、大腸菌のリボソームオペロン完全欠失株を宿主として、種々の系統に合わせたプライマーを用いて異種23S rRNAをPCR増幅し、機能スクリーニングを行い、いくつかの変異株を得た。 その他、R. marinusと生育環境の類似した高温環境から好熱菌を分離するとともに、ゲノム解析や環境ゲノムの調製等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I-RmaIの生化学的解析については予備的な発現系の構築と活性の確認を終えた。一方、I-RmaIは好熱菌酵素であるにも拘らず、大腸菌から抽出した粗酵素液は冷蔵保存すると失活しやすいという予想外の性状も判明し、より詳細な解析のためには、安定的な保存方法の条件検討が必要である。高機能23S rRNA遺伝子の取得については、小規模なスクリーニングながら、いくつかの高機能性のものを得た。先行して研究を進めてきた16S rRNA遺伝子についても並行して行なった結果、宿主の増殖速度から判断するに、23S rRNAの方がより加速効果が高く、タンパク質合成能の向上が見込まれることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
既知のホーミングエンドヌクレアーゼでは、切断反応後に基質と酵素が複合体を形成したまま分離しないことが知られている。そのため、基質デザインとともに、切断反応後になんらかの処理を行い、ハイスループット系に見合った種々の検討が必要であり、手数の少ない工程での実験系の開発を進める。in vivoでのゲノム編集をより効率的に行うには、大腸菌内でのI-RmaIの発現・活性を最適化する必要があり、進化方向性を見定めるためにも生化学的解析を優先的に行う。
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