研究課題/領域番号 |
19H00939
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
有江 力 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00211706)
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研究分担者 |
浅井 秀太 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (30723580)
荒添 貴之 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 講師 (40749975)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子嚢菌 / Fusarium oxysporum / アクセサリー染色体 / 植物病原性 / ベクター |
研究実績の概要 |
1.アクセサリー染色体の進化・機能の解明:SMRTシーケンスにより、新たにフザリウム属菌計10菌株(2019年度と合わせて計35菌株)の全ゲノム配列を明らかにした。バナナパナマ病菌のアクセサリー染色体領域喪失株の作出に成功、病原性の低下を認めた。これらの株の染色体をパルスフィールドゲル電気泳動およびGTBM法によって解析した。遺伝子推定解析、オーソログ解析、転移因子解析、GC含量解析等の方法を活用して、各株のアクセサリー染色体の構造の解析を実施した。染色体喪失株の解析によって、キャベツ萎黄病菌がアクセサリー染色体領域に、キャベツおよびシロイヌナズナに対する異なる病原性因子(エフェクター)を持つことを見出した。この他、全ゲノム配列を明らかにした他の菌株においてアクセサリー染色体の推定を開始、これらゲノム領域が真にアクセサリーゲノム領域であるかについての確認、ならびに構造上の特徴や機能について解析を進めている。アクセサリー染色体の構造・機能・特性にあわせた新規ゲノム編集技術の開発を開始した。各株のアクセサリー染色体の特異性に基づき、フザリウム分化型特異的検出法を確立し、特許出願した。 2. アクセサリー染色体の新奇形質転換ベクターとしての利用:2019年度に構築したCRISPR/Cas9システムのガイドRNAを改変し,核局在化シグナルを追加した改良型CRISPR/Cas9システムを構築した。これによりあらゆるゲノム編集効率の向上に成功し,トマト萎凋病菌ならびに他のフザリウム属菌のアクセサリー染色体上の遺伝子破壊ならびに染色体編集が可能となった。また人工ミニクロモソームの開発に成功し,水平移動の簡易検出系の確立ならびに推定関連遺伝子の破壊を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定以上の菌株の全ゲノムを解析、比較、複数株でアクセサリー染色体を特定、座乗する遺伝子の解析を開始していること、アクセサリー染色体喪失株を取得、病原性の低下を確認、アクセサリー染色体上の遺伝子の機能解析を順調に進めていること、さらに、また、Fusarium oxysporumでのCRSPR/Cas9システムを改良し、ゲノム編集効率の向上に成功するとともに、人工ミニクロモソームの開発に成功し,水平移動の簡易検出系の確立ならびに推定関連遺伝子の破壊を行ったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度(最終年度)は以下のように推進する方策である。 1.アクセサリー染色体の進化・機能の解明:2020年度までの35株に加え10株程度のF. oxysporum菌株の全ゲノムを解析、比較、各株のゲノム上のアクセサリー染色体およびアクセサリー染色体領域を特定、比較する。パルスフィールドゲル電気泳動による染色体分離・GTBM法による解析を行い、ゲノム解析結果と併せ、各株の染色体数やサイズを確認する。遺伝子推定解析等の方法を活用して、各株のアクセサリー染色体の構造を解析する。CRISPR/Cas9等による遺伝子破壊・相補実験によって作出した変異株を用い、アクセサリー染色体上の座乗推定遺伝子の機能を解析する。アクセサリー染色体の構造・機能・特性にあわせた新規ゲノム編集技術を開発、コア染色体では困難と考えられる大規模欠失・再編成技術の構築と遺伝子機能解析のハイスループット化を試みる。各株のアクセサリー染色体の特異性に基づき、植物病原性株では宿主特異性やレース識別用、生物農薬成分株では動態モニタリング等のための、PCRやLAMPに基づく特異検出技術を提示、実証試験を実施する。 2. アクセサリー染色体の新奇形質転換べクターとしての利用:非病原性株が持つアクセサリー染色体はアクセサリー染色体のプロトタイプと考えられるため、CRISPR/Cas9システム等を用いて大規模に編集、抗生物質代謝マーカーカセット、エフェクター、二次代謝産物生合成遺伝子カセット等を導入、非病原性株の形質転換を試みる。さらに、代表者らが独自技術として持つ小型染色体分離技術(Kashiwa 2017)等を駆使して、このアクセサリー染色体を分離、PEG法、あるいは、共培養法等によって、他の株、さらには、他種菌にこのアクセサリー染色体を導入、新奇の菌類形質転換用べクターとしての利用が可能か明らかにする。
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