研究課題/領域番号 |
19H00941
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田尾 龍太郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (10211997)
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研究分担者 |
金岡 雅浩 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10467277)
松本 大生 山形大学, 農学部, 准教授 (30632129)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 果樹 / 受粉受精 / 自家不和合性 / 果樹ゲノム科学 / 組換え遺伝子 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたる本年度は以下の項目について検討し,以下の実績を得た. (共通反応に関する仮説検証実験)昨年度までの実験で作製したMGSTのペプチド抗体を用いて,雌ずい粗抽出タンパク質のプルダウンアッセイを試みたが,MGST存在条件でのプルダウン溶出画分のみに検出されるタンパク質はなく,MGSTと他の花粉管タンパク質との相互作用は確認出来なかった.作製したMGST抗体の力価が高くないためにこのような結果となった可能性もあるので,新たにペプチド抗体を再度作製したが,同様の結果であった.一方,昆虫細胞で組換えS-RNase作製し,これを用いた共免疫沈降実験を行ったところS-RNaseとMGSTの結合が確認された.今後この組換えS-RNaseを用いてさらに実験を進める予定にしている. (和合反応に関する仮説検証実験)昨年度までの実験で,S locus F-box likes(SLFLs)およびS haplotype-specific F box likes(SFBLs)のSCF複合体形成能およびS-RNaseのポリユビキチン化活性を検証した.S-RNaseのポリユビキチン化活性は確認出来なかったが,SCF複合体系性能は確認された. (不和合反応に関する仮説検証実験)大腸菌でMGSTの組換えタンパク質を作製し,MGSTの存在下でのS-RNaseとSFBの相互作用を検証したが,これまでのところS-RNaseとSFBの相互作用は検出されていない. (組換え花粉を用いた証明実験)マイクロデバイスをデザインし,マイクロデバイスを用いた自家不和合性再現実験の条件を検討したが,シロイヌナズナやトマトなどと異なり,サクラ属の花粉管慎重には多量の酸素が必要であるようであり,花粉管伸長が抑制された.in vivoでのアンチセンスオリゴを用いた不和合性の打破のため,MGSTとSFBのアンチセンスオリゴをデザインした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の初めに計画した実験のほとんど全てを実行することができ,一定の成果を得たので,おおむね順調に研究が進んでいると判断したが,予測した結果の得られていない実験も多かった.
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今後の研究の推進方策 |
分類学上広範な植物が共有するS-RNase依存性配偶体型自家不和合性認識機構において,いかにしてサクラ属においてのみ異なる特異な認識機構が成立したのかという進化遺伝学上の問いに一定の答えを出すためには,MGSTの機能解明が鍵となる.またこれまでに利用してこなかった共焦点顕微鏡を用いた研究や新しい実験系の開発も必須である.昨年度までに検討してきた不和合性反応の再現系やアンチセンスオリゴを用いた遺伝子発現制御系の開発もさらに進めていく.
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