研究課題
1)Qsd1の解析と制御:a)野生オオムギと栽培オオムギのQsd1配列では4つのアミノ酸置換が確認されている。このアレル別の過剰発現体を3種類作出することに成功し、T1世代を栽培した。b)オオムギQsd1のアラニンアミノ酸転移酵素はタンパク質の立体構造が判明している。その構造に基づいて変異体作出することを予定しているが、まずは、オオムギのゲノム編集によってノックアウト変異体の作出に成功し、T1個体を栽培した。c)コムギのゲノム編集技術を用いて、3つのサブゲノムのQsd1をそれぞれ改変し、効果的な休眠性の得られる三重変異体を作出し、学術論文として出版した。d)コムギの主要品種「春よ恋」と「きたほなみ」の人為突然変異集団からQsd1配列の変異体のTILLING法による選抜を実施した。2)他の遺伝子の解析と制御:a)ゲノム編集によるオオムギQsd2改変を実施し、改変当代T0を作出してノックアウト変異が起きていることを確認した。3)遺伝子進化相互作用解析:a)休眠型のqsd1を持っているにもかかわらず休眠しないエチオピア在来品種と「はるな二条」(休眠短)の交雑、野生オオムギ(休眠長)と「はるな二条」の交雑、野生オオムギとエチオピア品種の交雑、計3集団を栽培し、休眠程度を評価してそれぞれの集団におけるQTLを検出した。また、効率的なマーカー作成のために、RNA-Seq解析によって、オオムギ108系統を解析し、配列の相互比較によって、大量のDNAマーカーが得られることを確認して、学術論文として出版した。
2: おおむね順調に進展している
平成元年度にオオムギ系統の遺伝子転写産物の全長解読を実施する予定であったが、実施研究機関である英国ダンディー大学(ジェームスハットン研究所)がコロナウイルスによるロックダウン等の影響で、委託解析できなくなり、その分の経費を繰越した。それ以外の研究内容は順調に進展している。
コムギおよびオオムギの両方で、ゲノム編集が実施できる体制が確立されたので、アレルの違いによる休眠性の発現程度、進化の過程で生み出された品種のアレルの相違、これらを操作するためのDNAマーカーの作出などを精力的に進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
Cell Reports
巻: 28 ページ: 1362-1369
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Frontiers in Plant Sci.
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