研究課題
宿主表面で寄生植物が付着器を形成する仕組みの解明に関して、付着器形成に寄与すると思われる表皮で発現している機械刺激受容型イオンチャネル遺伝子を候補化した。茎表皮での発現、およびシロイヌナズナでの相同遺伝子の機能情報をもとに、四つの機械刺激受容型イオンチャネル遺伝子を、吸器原基形成に関与するものとして候補化した。これら四遺伝子のサイレンシングを行うため、artificial microRNA(amiRNA)を過剰発現する組換え体宿主タバコを作製した。2021年度中に、維管束幹細胞変異系統シロイヌナズナを宿主としたネナシカズラ吸器の維管束細胞への分化率を追試した。その結果、維管束幹細胞変異系統シロイヌナズナwox4およびtdrを宿主とした場合でも、ネナシカズラ吸器先端の探索糸細胞が道管管状要素に分化する割合は、野生株を宿主とした場合と有意差が無いことが確認された。2021年度以前に実施したaplやirx変異体を宿主とした結果とも合わせて、宿主側の維管束組織形態形成不全は寄生の成立に影響しないことがわかった。しかしながら道管と道管、篩管と篩管が正しくつながる機構は未解明なものとして残っているため、今後木部篩部細胞を人為的に分化させる系を用いた実験を行う予定である。さらに、2021年度までに宿主植物からネナシカズラへのRNA移行に関して、宿主特有の特化代謝産物生合成に必須な酵素遺伝子が、選択的スプライシング産物と思われるイントロン残留型mRNAとしてネナシカズラに移行していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
2021年度以前の研究で、探索糸細胞の発達に宿主組織が周囲に存在することが必要であることが示され、宿主由来物質による促進が示唆された。2021年度はその本体に迫るべく、維管束組織形成不全の変異型宿主を用いたり、宿主茎由来の抽出物の添加等を試みたが、これまでのところ探索糸の発達を有意に阻害したり促進したりする新規物質が見いだされていない。既知物質の中からはジベレリンによる促進効果と、サリチル酸による抑制効果が見いだされている。宿主由来の調節物質に迫るために、当初計画にはなかった新アプローチが必要とされている状況である。いっぽう、宿主-寄生間でのRNA植物間移行に関しては新規な事例が発見され、移行後に寄生植物に新規な機能を与えていることが示されつつある。
付着器形成に関わることが推測される四つの機械刺激受容型イオンチャネル遺伝子を、artificial microRNA(amiRNA)過剰発現する組換え体宿主タバコを用いて抑制し、付着器形成への影響を解析する。amiRNA過剰発現組換え体宿主タバコに寄生させたネナシカズラを第二の宿主に寄生させる系を用いて、標的とした機械刺激受容型イオンチャネル遺伝子の吸器原基形成への関与を解析する。宿主由来物質の探索糸形成への関与に関しては、宿主側の道管篩管の有無が探索糸細胞分化を制御するか否かを更に調べるために、VISUAL法によって選択的に道管または篩管を分化させた宿主を用いたセミインビトロ吸器誘導系を用いて解析する。さらに、宿主植物から選択的スプライシング産物と思われるイントロン残留型mRNAがネナシカズラに移行している事例に関しては、こうしたイントロン残留型mRNAがネナシカズラ側でどのように処理されているのかを解析し、成果を論文化したいと考えている。
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