研究課題/領域番号 |
19H00945
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川崎 努 近畿大学, 農学部, 教授 (90283936)
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研究分担者 |
児嶋 長次郎 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50333563)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物免疫 / NB-LRR / エフェクター / イネ / 病害抵抗性 / 病原菌 / 受容体 |
研究実績の概要 |
植物に重要病害を引き起こすXanthomonas属やRalstonia属の病原菌は、植物の核において転写因子として働くTALエフェクターを植物細胞内に送り込む。TALエフェクターは、菌の増殖に有利に働く遺伝子を制御し、感染を拡大させることが知られている。一方、イネ品種黄玉がもつNB-LRR型受容体であるXa1は、TALエフェクターを認識して防御反応を誘導することが知られている。しかし、植物のNB-LRR受容体については、それらによる免疫活性化機構についてもあまり理解されていない。そこで、本研究では、Xa1による免疫誘導機構を解析することで、NB-LRR型受容体による免疫活性化機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、Xa1と相互作用する因子として見出したRAP転写制御因子に関して解析を進め、RAPがTALエフェクターと直接的に相互作用することを見出した。また、細胞内においてXa1とTALエフェクターの複合体形成が見られるものの、直接な相互作用は検出できていない。そのため、Xa1は、RAPを介してTALエフェクターを認識し、免疫を活性化することが示唆された。また、前年度の解析により、RAPの過剰発現体とノックアウト変異体が共に強い抵抗性を誘導することが明らかになった。本年度、詳細な遺伝子発現解析を行い、RAPの過剰発現体とノックアウト変異体では、異なるタイプの遺伝子が活性化されていることがわかった。これらの結果は、前年度に提唱した「RAPによって抑制されるイネの遺伝子が存在し、その遺伝子は、Xa1依存型抵抗性を正に制御している」というモデルと一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAP、TALエフェクター、Xa1の間の相互作用解析により、RAPは、Xa1とTALエフェクターの両方に直接相互作用することが明らかになった。これまで、Xa1とTALエフェクターの間においては直接的な相互作用が検出できていないため、Xa1がRAPを介してTALエフェクターを認識していると考えられた。また、RAP過剰発現体の解析により、Xa1免疫において活性化される新規な免疫因子としてPLATを発見した。また、PLATの過剰発現体では、免疫関連遺伝子の発現が上昇することが分かり、免疫誘導のポジティブレギュレーターとして働いていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
RAP過剰発現体とrap変異体では、Xa1依存的な強い抵抗性反応が誘導されることが明らかになった。その制御機構を詳細に解析するために、白葉枯病菌感染に加えて、mock処理を行い、両サンプルを用いたRNAseq解析を行う。その結果から、RAP過剰発現体とrap変異体において、mock処理に対して菌感染により発現変動する遺伝子を抽出し、それらの遺伝子について解析を進める。また、RAP過剰発現体とrap変異体で発現が上昇しているPLAT遺伝子を見出した。PLAT遺伝子の過剰発現体は、病原菌の非存在下でも免疫関連の遺伝子PLATが増加していることが明らかになった。このことは、PLAT遺伝子が免疫活性化因子として機能していることを示唆している。そこで、PLATのタンパク質局在解析やノックアウト体の作出を進め、免疫誘導におけるPLATの機能を明らかにする。また、多くのNB-LRR型受容体は、タバコでエフェクターと共発現することで過敏感反応を誘導することが知られている。しかし、Xa1はTALエフェクターと共発現させても、過敏感反応は誘導されない。そのため、さらにRAPや、TALエフェクターと相互作用することが知られている基本転写因子Xa5を共発現させることで、過敏感反応を誘導できるかを解析する。また、スプリットルシフェラーゼ解析により、iTALエフェクターが、Xa1とRAP、RAPとTALエフェクターの相互作用を阻害することが明らかとなり、iTALエフェクターがRAPを標的としている可能性が示唆された。今後は、他の方法を利用して本実験結果を検証する。以上の一連の実験を通して、Xa1によるTALエフェクターの認識と免疫の活性化機構を解明する。
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