研究課題/領域番号 |
19H00947
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
潮 秀樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50251682)
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研究分担者 |
細谷 孝充 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60273124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / 肥満 / 褐藻 / 単糖 |
研究実績の概要 |
DeOGalがマウス脂肪細胞の細胞内・間情報伝達機構に及ぼす影響を詳細に明らかにし,作用機序を解明する.すなわち,マウス前駆脂肪細胞および成熟脂肪細胞を用いて,1) DeOGalによるトランスクリプトームおよびプロテオーム変動解析, 2)DeOGal受容分子の特定,3)細胞内・間情報伝達機構の解明を行い,DeOGalの内臓脂肪蓄積抑制効果の作用機序の全貌を明らかにすることを目的とした. ヒト肝細胞を用いて,DeOGalが細胞毒性を示さないことを確認するとともに,前年度までに明らかにしたDeOGal機能発現の情報伝達経路を,各種ウェスタンブロッティングで確認した.これまでのDeOGalに関する検討から,DeOGalの投与が脂肪細胞のAMPKの活性化を誘導することが明らかとなっているため,体脂肪蓄積を抑制するものと考えられた.そこで,2-デオキシ-D-グルコースおよびグルコサミンがマウス3T3-L1脂肪細胞の脂肪蓄積に及ぼす影響を調べたところ,5 mM 2-デオキシ-D-グルコース,5 mMグルコサミンあるいは5 mMDeOGalの存在下において脂肪球の生成が抑制されるとともに,AMPKのリン酸化も有意に上昇した.DeOGalがマウス3T3-L1脂肪細胞のFASのタンパク質発現に及ぼす影響を調べたところ,用量依存的にFASの発現量が低下し,脂肪酸の合成が抑制されることが明らかとなった.DeOGalの存在下でミトコンドリアが強く染色される傾向が認められた.DeOGalが,脂肪細胞におけるアディポネクチンの発現および多量体化に及ぼす影響について検討したところ,トータルのアディポネクチン発現量は低下するが,多量体化の比率が容量依存的かつ有意に増大することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DeOGalがマウス脂肪細胞の細胞内・間情報伝達機構に及ぼす影響を詳細に明らかにし,作用機序を解明することを目的とし,マウス前駆脂肪細胞および成熟脂肪細胞を用いて,1) DeOGalによるトランスクリプトームおよびプロテオーム変動解析, 2)DeOGal受容分子の特定,3)細胞内・間情報伝達機構の解明を行い,DeOGalの内臓脂肪蓄積抑制効果の作用機序の全貌を明らかにすることを目的とし,以下のような成果を得ている. 1.フコースは脂肪細胞におけるアディポネクチンの多量体化,AMPK情報伝達系の活性化,ミトコンドリアの活性化を経てエネルギー異化,特に脂質異化を促進するとともに,脂肪酸合成を抑制することによって肥満を抑制するものと考えられる. 2.一般に脂質異化が促進される代謝変動は食欲の増進を伴うものであるが,食欲増進を促進する一因とされる単量体アディポネクチンは減少するため,フコースは食事性肥満を軽減する可能性が示唆される.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに,DoGalのマウス脂肪細胞への作用機序についておおむね解明が進んでいる.今後は,肝細胞など脂肪細胞以外の細胞や臓器に対するDeOGalの作用やその機序の解明を進めるとともに,既知の抗肥満化合物であるエラグ酸などの作用機序と比較するとともに,化合物としての特性や効果の程度からDeoGalの優位性についても検討を加えることとする.また,これまでの成果から,脂肪肝への効用も期待されることから,脂肪肝,肝機能障害など肝臓に由来する病変に対するDeOGalの効果についても検討を加えることとする.
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