研究課題
本年度の研究実施計画は主に以下の二つであった。①2019年5月に、TALENにより攻撃性関連遺伝子AVTR-V1a2の両アレルがKO(ホモKO)されたF2世代のマサバを作出し、系統として固定する。②マサバのAVTR-V1a2遺伝子KOを目的としたPPRモジュールのマサバ受精卵への導入条件を検討するとともに、FO世代を作出する。さらに、FO世代を対象にして、変異導入率ならびに遺伝子の解析を行う。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。①に関して:F1系統の内、両アレルに変異が導入された雌1尾と雄4尾を交配させたが、受精卵を得られなかった。そこで次に、両アレルに変異が導入された雌1尾に対して、片アレルに変異が導入されたヘテロKOの雄8尾を交配に供し、F2系統の受精卵を得ることに成功した。F2系統においては、メンデルの遺伝の法則に従い、1:1の割合でホモKO個体とヘテロKO個体が出現した。現在まで、21尾のホモKO個体が生存している。②に関して:PPR-nucleaseはTALENと同じく、2分子で機能するため、Left、rightの2分子の構築が必要である。本研究では、left24個、right23個を作製した。次にゲノム編集が起きるとnLuc活性が復活するレポータアッセイ系を構築し、PPR-nucleaseの105 pairをテストした。その結果、有力候補の15 pairが得られた。
3: やや遅れている
TALENにより攻撃性関連遺伝子AVTR-V1a2の両アレルがKO(ホモKO)されたF2世代のマサバを作出したものの、孵化率が低く、育成途中での死亡も多かったことから、仔稚魚を対象とした攻撃行動の解析はできなかった。また、国産ゲノム編集技術であるPPRを用いて、マサバの攻撃性関連遺伝子AVTR-V1a2を標的遺伝子としたKO実験に関しては、標的部位を破壊するためのLeft、rightの2分子の構築を進めたが、最終的に有力候補15 pairが得られたのが9月となった。マサバの産卵期が6月上旬までであり、受精卵にPPR-nucleaseをマイクロインジェクションする機会を逸した。
現在、両アレルに変異が導入された(ホモKO)個体が21尾おり、それらを親魚として2020年度の産卵期(5月上旬~6月上旬)に産卵誘導を行い、得られた仔稚魚を対象として、バイオイメージインフォマティクスによる行動解析を行う予定である。また、PPRの有力候補の15 pairを用いた、野生型マサバ受精卵に対するマイクロインジェクションを産卵期に行い、変異導入率等を解析する。高い変異導入率を示したロットに関しては、仔稚魚を育成し、成長した11月を目途にフィンクリッピングを行い、各個体のDNA解析を行うことにより、塩基の変異パターンを明らかにする。一方、本研究グループが実験に使用している完全養殖マサバ系統について、ゲノムデータベース整備を行う予定にしている。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 1,11
https://doi.org/10.1038/ s41598-019-41468-8
月刊養殖ビジネス
巻: 56 ページ: 61,64