研究課題
前年度に引き続きオステオポンチンおよびオステオポンチン由来ペプチドが子宮でのEGF濃度の回復に及ぼす効果を調べたところ、50-60%のEGF濃度回復率と40-50%の受胎率が得られ、その有効性が示された。次いで、EGF濃度異常と胚由来因子への感受性の変化の関係を調べるために、胚および胚由来物質(インターフェロンτ)が子宮でのサイトカインおよびリンパ球のサブセット構成に及ぼす効果を低受胎牛と健康牛で比較した。その結果、処置前の両者のサイトカイン発現に異なる傾向が見られたが、胚および胚由来物質への反応性には両者の間に差異はみられなかった。さらに、オステオポンチンの効果が腟から子宮に伝達される機序を調べるため、腟で感作された免疫細胞が附属リンパ節でリンパ球を活性化し、血行性に子宮に移行して効果を発現するという仮設を検討した。その結果、一部の供試牛では、オステオポンチンの腟内投与後に末梢血リンパ球でのサイトカイン発現に変化がみられ、その変化はEGF濃度が正常化した牛と異常が持続した牛で異なった。そこで、EGF濃度が正常化した牛のリンパ球を低受胎牛の子宮内に投与したところ、約40%の牛でEGF濃度が正常化したが、受胎率は向上しなかった。以上の結果から、オステオポンチンの腟内投与による子宮でのEGF濃度正常化には、末梢血リンパ球のサイトカイン発現を適切な状態に誘導する必要のあることが示された。一方、EGF濃度の正常化が受胎性の回復につながらなかったことから、オステオポンチン投与は、リンパ球のサイトカイン発現変化に加えて、受胎性回復に必要な何らかの変化を引き起こしていると考えられた。その候補として、EGF濃度および受胎性の回復に伴ってみられた内分泌系および免疫系に関わる各種受容体の発現低下が考えられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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