研究課題/領域番号 |
19H00970
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 雅裕 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00444521)
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研究分担者 |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トキソプラズマ / インターフェロン / 宿主免疫系 |
研究実績の概要 |
トキソプラズマ原虫は、さまざまな病原性エフェクター分子を宿主細胞に分泌して、宿主のインターフェロン-γ (IFN-γ) 依存性免疫を破壊する。 これらのエフェクターの中で、ROP18 は、免疫関連 GTPase (IRG) やグアニル酸結合タンパク質 (GBP) などの IFN 誘導性 GTPase を直接リン酸化し、不活性化し、IFN 誘導性 GTPase 誘導性細胞自律免疫を破壊する。 ROP18 の作用機序は広く研究されているが、寄生虫自体でROP18が生成される分子メカニズムについてはほとんど知られていない。 ここでは、寄生虫の ROP18 mRNA 発現におけるトキソプラズマ転写因子 IWS1 の役割を報告します。 野生型病原性 I型トキソプラズマ と比較して、IWS1 欠損寄生虫は、寄生胞膜 (PVM) への IRG および GBP の負荷が劇的に増加した。 さらに、IWS1欠損寄生虫は、野生型マウスでは病原性の低下を示したが、IFN-γ受容体を欠くマウスでは正常な病原性を保持していた。 さらに、IWS1 欠損寄生虫は、ROP18 mRNA 発現の大幅な減少を示した。 ただし、タグ付き IWS1 は ROP18 遺伝子座のゲノム領域と直接結合しなかった。 IWS1 欠損寄生虫における ROP18 の異所性発現は、PVM へのエフェクターの負荷の減少と、野生型マウスの in vivo 病原性を回復させた。 まとめると、これらのデータは、トキソプラズマIWS1 が ROP18 mRNA 発現を間接的に調節して、IFN-γ 活性化宿主細胞およびマウスの適合性を決定することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年1月にmBio誌に研究を発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
IFN誘導性GTPaseがトキソプラズマのみならずサルモネラ、クラミジア、野兎病菌など広範な家畜の監視伝染病の病原体が形成する病原体含有小胞に蓄積し破壊することはわかっているが、IFN誘導性GTPaseが病原体含有小胞膜を認識するメカニズムやIFN誘導性GTPaseの制御機構など不明な点が多い。IFN誘導性GTPaseの制御因子を同定するために、IFN誘導性GTPaseの中で特に病原体含有小胞の破壊に重要なIRGB6とGBP1の結合分子を免疫沈降―質量分析法で同定する。タグ付きのIRGB6及びGBP1をIRGB6欠損細胞およびGBP1欠損細胞に発現させIFN-γ及び病原体(サルモネラ・トキソプラズマ・クラミジア・野兎病菌)感染細胞において抗タグ抗体を用いて免疫沈降を行い、それぞれの結合分子を同定する。それぞれの病原体に共通する結合分子に分け、その別のタグ付き分子を作製しIRGB6やGBP1との共局在を免疫染色法で検討する。さらにIRGB6(GBP1)結合分子の遺伝子欠損マウスをゲノム編集法により作製し、抗膜形成病原体宿主免疫応答における生理的な役割を検討する。IRGB6(GBP1)結合分子欠損マウスを作製後、線維芽細胞(MEF)及び骨髄由来マクロファージ(BMDM)を採取し、IFN-γ刺激によるIRGB6やGBP1の病原体含有膜への膜動員率、膜形成病原体の感染率や病原体数の低下(または上昇)がみられるか、また感染細胞の透過電子顕微鏡観察による病原体含有膜の破壊の有無を検討する。さらに野生型マウス及びIRGB6(GBP1)結合分子欠損マウスに膜形成病原体を感染させ、各臓器における病原体数の測定、血清中の炎症性サイトカイン濃度の測定、生存率の測定を行い、役割を検討する。
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