トキソプラズマは、ヒトや動物に対して生命を脅かすトキソプラズモ症を引き起こす重要な原生動物病原体である。最近では、ゲノムワイドのガイドRNA(gRNA)ライブラリーを使用したin vitro CRISPRスクリーン法が開発され、ヒト線維芽細胞(HFF)でのトキソプラズマの増殖に必須のin vitroフィットネス遺伝子を特定している。この方法はマウスを使用した3つの研究によってin vivoでの応用が進められ、特にROPsや密粒体タンパク質(GRAs)を主に対象とする小規模なgRNAサブライブラリを使用したスクリーニングにより、いくつかの毒性因子が同定された。しかし、トキソプラズマ全体の遺伝子の約3%に過ぎないROP/GRA遺伝子以外が寄生虫の体内適応にどのように寄与するかは不明である。本研究で新たに確立されたin vivo CRISPRスクリーニングシステムは、C57BL/6マウスと毒性タイプIのトキソプラズマRH株を使用しており、ROP/GRA遺伝子だけでなく、未報告のnon-ROP/GRA遺伝子もインターフェロン(IFN)-γ依存性または非依存性のin vivoフィットネス遺伝子として同定された。このスクリーニングは、免疫能力が正常なワイルドタイプマウスと免疫不全のIfngr1欠損マウスを比較することにより行われた結果、宿主の免疫系はトキソプラズマ感染に迅速に反応し、IFN-γの刺激によってIFN誘導性のグアノシン三リン酸分解酵素(GTPases)の発現が促進され、寄生虫の増殖が抑制される。IFN-γ依存性の宿主免疫は、トキソプラズマの体内適応性と毒性に大きな影響を与える生物学的ボトルネックとして重要である。従って本研究は、トキソプラズマのIFN-γ依存性および非依存性のin vivoフィットネス遺伝子の役割を調査するための遺伝的資源を提供した。
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