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2021 年度 実績報告書

異種間共生によるヒトの健康促進ーヒト-イヌ共生細菌叢によるこどもの心身の健康発育

研究課題

研究課題/領域番号 19H00972
研究機関麻布大学

研究代表者

菊水 健史  麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)

研究分担者 西田 淳志  公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (20510598)
安藤 俊太郎  東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20616784)
野元 謙作  獨協医科大学, 医学部, 講師 (30786976)
茂木 一孝  麻布大学, 獣医学部, 教授 (50347308)
宮内 栄治  国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員(移行) (60634706)
永澤 美保  麻布大学, 獣医学部, 講師 (70533082)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード思春期児童 / Well-Being / ノトバイオートマウス / 腸内細菌叢 / 社会性 / オキシトシン
研究実績の概要

R3年度は以下のデータを得た。まずイヌの飼育児童の細菌叢の対象を広げ、無菌マウスに生着させる追加実験を実施し、その後の社会行動の変化を解析した。その結果、昨年度と同様の結果が得られた。具体的には、アルミ呈示テストにてイヌ飼育経験あり群は全週齢においても逃避行動が多く、4,6週齢で匂いかぎ行動が少なかった。社会性行動テストにはイヌ飼育経験あり群は4週齢で陰部匂いかぎ行動が多く、追尾行動や頭部匂いかぎ行動は少なかった。これらの結果から、イヌの飼育経験の有無によって子供の唾液中細菌叢が変化し、その細菌叢はマウス宿主において、攻撃性行動や社会性行動を変化させた。これらのことから、イヌの飼育による心身の変化の一部に細菌叢が関わる可能性が示された。次に、これらのノトバイオートマウスの糞便解析を実施した。現在16S RNA解析は終了し、行動データとの相関を実施している。並行して、イヌ飼育児童群と対照群との常在菌叢の比較解析と合わせて、ノトバイオートマウスで見出された候補菌の保有率の比較を実施している。またこれまでヒトとイヌのインタラクションにより、ヒトのオキシトシンの上昇を見出していること、オキシトシンがストレス軽減効果や社会性の向上をもたらすことが知られているため、児童の尿中オキシトシンとコルチゾール値を測定した(n=3000)。こちらも現在、アンケート結果との相関解析を実施している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

思春期児童のイヌの飼育によるWell-Beingの上昇の背景として、常在菌叢の変化という大胆な仮説を立てた実験を開始した。今年度は昨年度のノトバイオートマウスの実験を追試し、その再現性を得た。このことは、イヌの飼育により児童の細菌叢が変化し、その細菌叢によって、児童の社会性が変化、Well-Beingの上昇につながった可能性を示すものである。現在、細菌叢の変化が内分泌機能や免疫機能を介したものかを明らかにするための、分子解析を児童ならびにノトバイオートで並行して実施しており、計画に対して順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

上記の通り、ノトバイオートマウスにてヒト児童と類似した行動表現型を得ることができた。これにより、イヌの飼育による児童の心身の健康に与えるよい影響のメカニズム解明に挑戦できる体制が整った。現在進めている1)ノトバイオートマウスにおける細菌叢と行動表現型の関連解析、2)ノトバイオートで認められた菌株のイヌ飼育児童における保有率の計算、3)ノトバイオートの中枢変化、特に視床下部オキシトシン産生細胞の活性化ならびに投射部位である扁桃体や前頭前野の機能分子の定量、4)児童の尿中コルチゾール値とオキシトシン値の測定結果と行動アンケートとの相関解析、ならびに細菌叢との相関解析、5)ノトバイオートマウスの免疫分子の動態解析、を実施し、最終ゴールである、イヌ飼育による児童の心身の健康に及ぼすメカニズムの解明に挑む。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Neuroendocrine Mechanisms of Social Bonds and Separation Stress in Rodents, Dogs, and Other Species2021

    • 著者名/発表者名
      Nagasawa Miho、Kikusui Takefumi
    • 雑誌名

      Current Topics in Behavioral Neurosciences

      巻: 1 ページ: 1-20

    • DOI

      10.1007/7854_2021_257

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oxytocin neurons enable social transmission of maternal behaviour2021

    • 著者名/発表者名
      Carcea I、Caraballo N、Marlin B、Ooyama R、Riceberg J、Mendoza N、Opendak M、Diaz V、Schuster L、Alvarado T、Lethin H、Ramos D、Minder J、Mendoza S、Bair-Marshall C、Samadjopoulos G、Hidema S、Falkner A、Lin D、Mar A、Wadghiri Y、Nishimori K、Kikusui T、Mogi K、Sullivan R、Froemke R.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 596 ページ: 553~557

    • DOI

      10.1038/s41586-021-03814-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Aims of the special issue of “Neuro-Molecular Understanding for the Gut-Brain Axis”2021

    • 著者名/発表者名
      Kikusui Takefumi
    • 雑誌名

      Neuroscience Research

      巻: 168 ページ: 1~2

    • DOI

      10.1016/j.neures.2021.05.008

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Validation of a newly generated oxytocin antibody for enzyme-linked immunosorbent assays2021

    • 著者名/発表者名
      MURATA Kaori、NAGASAWA Miho、ONAKA Tatsushi、TAKEYAMA Ken-ichi、KIKUSUI Takefumi
    • 雑誌名

      Journal of Veterinary Medical Science

      巻: 83 ページ: 478~481

    • DOI

      10.1292/jvms.20-0723

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A long-term study of the influences of human-dog interactions2021

    • 著者名/発表者名
      Kahori Koyama, Miho Nagasawa, Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      日本動物心理学会第81回大会
  • [学会発表] Emotional evaluation of dogs during eye-gaze to human by heart rate variability2021

    • 著者名/発表者名
      Haruka Hirasawa, Miho Nagasawa, Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      日本動物心理学会第81回大会
  • [学会発表] イヌ飼育によるだ液細菌叢構成変化が宿主行動に影響を及ぼす2021

    • 著者名/発表者名
      山岡未来、秋山潤、水田真未、上村いつか、安藤俊太郎、山崎修道、遠藤香織、西田淳志、永澤美保、茂木一孝、菊水健史
    • 学会等名
      第164回日本獣医学会学術集会
  • [学会発表] Oxytocin and tears in non-human mammals2021

    • 著者名/発表者名
      Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      MET Conference 2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 研究室WEBサイト

    • URL

      https://ahir-azb.theblog.me/

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公開日: 2022-12-28  

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