研究課題/領域番号 |
19H00981
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
篠原 彰 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (00252578)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相同組換え / 減数分裂 / 生殖細胞 / RAD51 |
研究実績の概要 |
DNAの交換反応である相同組換えは体細胞分裂期ではDNAの傷、DNA2本鎖切断の修復やDNA複製フォークの停止回復に、減数分裂期では染色体の分配やゲノムの多様性の産生に必須の役割を果たしている。本研究は、相同組換え反応の中で、最も重要な反応である、Rad51, Dmc1によるDNA鎖相同検索反応に着目し、中でも組換えパートナー選択の特異性を知るために、Rad51, Dmc1の因子に相互作用し、その機能を制御する因子を理解することで、組換えにおけるパートナー選択の分子メカニズムと制御の解明を目指している。特にヒトRAD51複合体をRAD51メデュエーターとアンチリコンビナーゼに焦点を当て、生化学的、構造生物学的方法によるメカニズム解析と、ヒト細胞とマウス個体レベルの解析を組み合わせることで、細胞内でのRAD51フィラメントの動的な連携と場による制御を介したゲノムの安定化の仕組みと、その破綻によるゲノム不安定化の分子病態も解明も目的としている。解析の結果、RAD51/DMC1フィラメントの集合を助ける新規因子SWSAP1を同定し、組換えにおける役割を解析してきた。さらに、ヒト、マウスでSWSAP1と結合する、組換えに機能する新規因子Fignl1を同定し、そのマウス個体や細胞における機能解析を実施している。その結果、Fignl1 の欠損はマウスでは胚性致死を示すことがわかり、精巣特異的なFignl1 コンディショナル ノックアウト(CKO(条件ノックアウト)を作成したところ、精子ができずに不稔になることもわかった。Fignl1 の繊維芽細胞を作成したところ、RAD51の局在に異常が生じることも明らかにできた。今後Fignl1 のマウスやタンパク質の構造と機能を解析することで、哺乳類におけるRAD51による相同検索とその制御の新規の機能を明らかにできると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトRAD51複合体をRAD51メデュエーターとアンチリコンビナーゼに焦点を当て、生化学的、構造生物学的方法によるメカニズム解析と、ヒト細胞とマウス個体レベルで解析を進めている。マウスの結果、Fignl1 の欠損は胚性致死を示すことがわかり、精巣特異的なFignl1 CKO(条件ノックアウト)を作成したところ、不稔になることもわかった。Fignl1 の繊維芽細胞を作成したところ、RAD51の局在に異常が生じることも明らかにできた。コロナ禍の中での研究制限があり、マウス室で飼育していたマウスに感染が確認され、そのクリーン化に時間を要し、当初より計画が遅れた以外はマウスの減数分裂期の解析、マウス由来の繊維芽細胞の解析も順調に進んでいる。Fignl1タンパク質の精製は大腸菌では難しいが、バキュロウィルスの系だと発現することが可能になり、精製方法も確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
新規因子として同定したヒトFIGNL1がヒトRAD51-DNA複合体を破壊し、SWSAP1がその破壊活性からRAD51-DNA複合体を保護する機能を有することを見出している。精製したタンパク質を用いて、この可能性を支持する予備的な生化学的解析の結果も得られている。そのメカニズムの詳細の解析のために、精製したタンパク質FIGNL1やSWSAP1を用いて、試験管内のRAD51集合反応と、より複雑なDNA鎖交換反応の再構成を目指す。RAD51に加えて、減数分裂特異的なDMC1でも同様の圧政を実施する。ヒトFIGNL1とそのRAD51との複合体のクライオ電子顕微鏡により構造解析を共同研究で実施する。ヒトFIGNL1は単量体では60kDと小さいが、AAA+ATPaseファミリーあり、実際は6量体を形成しているため、電顕による構造解析には十分適している。特に組換え反応を電子顕微鏡で1分子観察することを目指す。 細胞、個体内での組換え制御因子FIGNL1の機能を明らかにするため、マウスでノックアウトマウスを作成したところ、胚性致死であることが分かった。そのため、Cre-loxPを用いたコンディショナル ノックアウト(CKO)マウスを作成している。作成したマウスは減数分裂期の機能を解析する場合は、Stra8-Creなどの精巣特異的でノックアウトが出来る様なマウスを作成し、精巣などでの組換えの影響、特にRAD51やDMC1の集合反応への影響を解析する。同時にswsap1のノックアウトと掛け合わせて、swsap1 fignleの二重変異マウスを作成し、FIGNL1-SWSAP1の拮抗的な関係が個体内でも見られるのかを検証する。FIGNL1とSWSAP1の両者に結合することが知られているSPIDRのノックアウトマウスやヒト細胞を作成し、その表現型を解析する
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