研究課題
研究代表者は、SULT2B1bによって生成されるコレステロール硫酸(CS)が、免疫細胞の遊走や活性化に重要なRac活性化因子であるDOCK2の触媒ドメインに会合し、その機能を阻害することを見出した。本研究では、SULT2B1bの遺伝子発現制御機構を解明し、その発現を個体レベルでモニターできるレポーターマウスを開発すると共に、妊娠時の胎盤や子宮、がん組織等を対象に、SULT2B1bを介したCS産生の免疫回避における機能的重要性を実証することを目的に、以下の成果を得た。・ヒトおよびマウスの胎盤を用いて、妊娠の時系列に沿って、Sult2b1b遺伝子発現の変化をモニターした。・CRISPR/CAS9のシステムを用いて、SULT2B1bの発現を個体レベルでモニターできるノックインマウスを複数系統作製し、一部のラインにおいて機能することを確認した。・種々のヒトがんの手術検体(がん組織と正常組織)を対象に、CSの産生を質量分析イメージングを用いて解析し、ある種のがん組織ではCSが大量に産生されていることを見出した。・SULT2B1bの発現を欠くC57BL/6マウス由来の乳がん細胞株に、SULT2B1bを強制発現した細胞株を開発し、CSが大量に細胞外へ排出されることを確認した。これに、人工的なネオ抗原を発現させ、C57BL/6マウスに移植し、当該ネオ抗原を認識するTCRトランスジェニックマウス由来のCD4+ T細胞を移入することで、がんの免疫回避におけるCSの機能的重要性を実証した。
2: おおむね順調に進展している
SULT2B1bの遺伝子発現に関しても、CSの機能的重要性に関しても、重要な知見が得られており、順調に進展していると言える。
ヒトとマウスでは、胎盤の構築も異なるため、両者を一様に比較するには無理がある。そこで、マウスに関しては、single cell RNAseq等を活用して、SULT2B1b発現細胞の解析を進める予定である。
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