研究課題
研究代表者は最近、SULT2B1bによって生成されるコレステロール硫酸(CS)が、免疫細胞の遊走や活性化に重要なRac活性化因子であるDOCK2の触媒ドメインに会合し、その機能を阻害することを見出した。本研究では、SULT2B1bの遺伝子発現制御機構を解明し、その発現を個体レベルでモニターできるレポーターマウスを開発すると共に、妊娠時の胎盤や子宮、がん組織等を対象に、SULT2B1bを介したCS産生の免疫回避における機能的重要性を実証することを目的に、本年度は以下の成果を挙げた。・Single cell RNAseqを用いて、SULT2B1bを発現する胎盤細胞を特定すると共に、その遺伝子発現を解析した。また、SULT2B1bの発現を個体レベルでモニターできるノックインマウスを複数系統作製し、マウス妊娠過程におけるSULT2B1b陽性細胞の可視化に成功した。・大腸がん、前立腺がん、腎臓がんのヒト臨床サンプルを用いて、CSの産生を比較解析した。・SULT2B1bの発現を欠くがん細胞株に、SULT2B1bを強制発現した細胞株を複数系統樹立し1) syngeneic マウスに移植した場合、 腫瘍の増大が早いこと、2) 免疫チェックポイント阻害に抵抗性を示すこと、3) 人工的なネオ抗原を発現させ、マウスに移植し、それを認識するCD4+ T細胞を移入した場合、T細胞移入に抵抗性を示すことを実証した。・6,900,000化合物を対象に、SULT2B1bを標的としたインシリコスクリーニングを実施し、442個の候補化合物に関してウエットスクリーニングを行い、最終的に有望な化合物を2つ同定した。うち1つの化合物は、マウスに投与することで、免疫チェックポイント阻害に抵抗性を示すCS産生がん細胞株を感受性に変える効果があった。
2: おおむね順調に進展している
SULT2B1bの遺伝子発現に関しても、CSの機能に関しても、重要な知見が得られており、順調に進展していると言える。
妊娠免疫に関しては、CSの機能的重要性に焦点を絞り、研究を進める。一方、がん免疫におけるCSの重要性は実証できたので、治療応用を見据え、CS産生阻害剤の開発に注力する。
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