研究課題/領域番号 |
19H00984
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
樋口 芳樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90183574)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒドロゲナーゼ / 中性子結晶解析 / X線結晶解析 / プロトン経路 / ラマン分光法 / 酵素活性定量法 / 酸素耐性酵素 |
研究実績の概要 |
本課題では以下の(1)~(3)について研究を推進した. (1)2019年度に調製した[NiFe]ヒドロゲナーゼの中性子回折用結晶については,コロナ禍の影響で日本原子力開発研究機構・大強度陽子加速器施設(J-PARC)における中性子結晶回折実験はできなかった.また,試料調製のための嫌気グローブボックスが故障したが,部品が入荷されなかったために2020年度の予算を2021年度に繰り越して修理することとした.酸化型酵素の中性子結晶解析の結果と同じ結晶について実施したX線結晶解析の結果から本結晶中にはNi-Fe活性部位の構造が歪んでいる分子が混在していることを見出した. (2)ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構・一般則の確立(分子内の水分子の役割解明): Citrobacter由来[NiFe]ヒドロゲナーゼは,Ni-Fe活性部位に最も近い位置にあるFe-Sクラスターが,[4Fe-4S]-4Cys型のクラスターである.このヒドロゲナーゼは,酸素耐性酵素であるが,競争阻害剤である一酸化炭素(CO)が結合することを奈良先端科学技術大学院大学および分子科学研究所のEPRおよびFT-IR装置を用いて確認した.また,COの結合を充分に確認できる条件(pHおよび温度)の取得に成功した. (3)ラマン分光法による触媒活性定量法の開発: 再現性の高いラマン散乱データを得るための測定セルを考案して,標準型(酸素感受性)の[NiFe]ヒドロゲナーゼの触媒活性定量について実証実験を行った.そのセル内にゲル化したヒドロゲナーゼを挿入して測定したところ,ゲル化した酵素を挿入しても気液界面の面積が溶液試料と同じであれば,同じ酵素活性パラメータが得られることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素還元型[NiFe]ヒドロゲナーゼの中性子結晶構造解析は進展していないが,結晶化条件の改良は進んでおり,また酸化型酵素の中性子回折データを用いた高分解能中性子結晶構造解析結果と,同じ結晶について実施したX線結晶構造解析結果から結晶中に活性部位の構造が歪んでいる分子が混在していることを見出すことができた. Citrobacter由来[NiFe]ヒドロゲナーゼについて,競争阻害剤である一酸化炭素(CO)が結合する条件(pHおよび温度)の取得に成功した. ラマン分光法による触媒活性定量法の開発では,ゲル化した酵素においても気液界面の面積が酵素溶液と同じであれば,同じ酵素活性パラメータが得られることを見出した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は各課題について以下のように推進していく. (1)[NiFe]ヒドロゲナーゼの高分解能中性子結晶構造化学:硫酸還元菌由来の[NiFe]ヒドロゲナーゼの水素還元型巨大単結晶について,日本原子力開発研究機構・大強度陽子加速器施設(J-PARC)にて中性子回折実験を行い高分解の中性子回折フルデータセットを収集する.次に同じ結晶について,SPring-8にて高分解能X線回折データを収集する.中性子とX線の回折データを用いて高精度の中性子結晶解析を進める.また,酸化型酵素の中性子結晶解析の精密化を進め,歪んだ構造の活性部位構造を確定させる. (2)ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構・一般則の確立(分子内の水分子の役割解明): Citrobacter由来[NiFe]ヒドロゲナーゼのCO結合型試料の精密X線構造解析を目指す. (3)ラマン分光法による触媒活性定量法の開発: 酵素の活性を最大限に定量する手法の開発を進める.
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