研究課題
(1)ヒドロゲナーゼの中性子結晶構造解析:酸化型酵素の結晶で見出された歪んだ構造のNi-Fe活性部位について,Ni原子の酸化状態や配位構造について理論化学計算を行い,さらにX線回折データの異常分散効果も加味したところ,Ni原子は平面四角形のNi(II)配位構造をとることを見出し,さらに,Ni原子は本来の活性型の位置から移動していることも明らかにした.また,本結果はこれまでの分光学的な実験結果とも矛盾しないことも確認した.それらの知見を基に精密化を完結させた結果,活性部位に最近接に位置している[4Fe4S]クラスターのシステインS原子配位子と主鎖のアミドN原子間の水素結合に「低障壁水素結合」と思われる構造を見出した.本結果は,英国王立化学会の化学専門誌・Chemical Science誌に発表した.水素や重水素によって還元した酵素結晶の中性子回折実験については本申請研究中には実施できなかった.(2)ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構・一般則の確立(分子内の水分子の役割解明):酸素耐性を有するNAD+還元ヒドロゲナーゼについて触媒反応サイクルの中間体の同定を試みた.その結果,Ni-Fe活性部位のNi-SR状態とNi-C状態間の平衡が温度によって動くことを見出し,これは,活性部位と近接[4Fe4S]クラスター間で電子の授受があることに起因すると結論した.本結果は,J.Am.Chem.Soc.誌に投稿審査中である.ギ酸脱水素酵素のX線結晶解析に成功し,NAD+還元ヒドロゲナーゼとの構造類似性の詳細や進化的関係を明らかにしてIUCr.J誌に発表した.(3)ラマン分光法による触媒活性定量法の開発:酵素溶液をエアロゾルにすることで初期触媒反応速度が大幅に上昇することを見出した.これにより,酵素と基質(気体水素)の反応が主に酵素溶液相と気相との界面で起こっていることを確認した.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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