研究課題/領域番号 |
19H00985
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
木賀 大介 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30376587)
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研究分担者 |
村田 昇 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60242038)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質 / 遺伝暗号 / 機械学習 / 合成生物学 / 進化分子工学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者独自の遺伝暗号の改変を活かした合成生物学アプローチによって、生命を構成するために20種類のアミノ酸全てが必要か、という疑問を追求することにある。その過程では、これまで申請者が得意としてきた、タンパク質人工進化、および、数理モデルに基づく生体高分子システムの構築の経験が活かされる。本研究ではこの根源的な疑問に答えるため、生育に必要な代謝系が、特定のアミノ酸を含まない良いタンパク質群によって構成されている大腸菌を作成する。生命の根本を改変する理学は新たな工学も生む。本研究では理学追及と並行して、この技術を転用した開発も行う。
硫黄原子を含まないGFPについて、蛍光が観測可能な変異体を単離した。換言すると、全てのシステインおよびメチオニン残基を置換しても蛍光を持つGFPを単離している。この単離のための人工進化では、ある段階までは標準暗号表を使ったタンパク質合成を行ったが、蛍光を持つ変異体の多くは復帰変異を持ってしまい、活性型変異体の単離効率が極めて低かった。そこで、どのような塩基配列のmRNAからもこれら含硫アミノ酸を持たないペプチドが生産される単純化暗号表を用いた人工進化を行った。その結果、の結果、復帰変異の障害なしに、硫黄原子を含まないGFPが蛍光を発することを示すことができた。
また、ひとまとまりの代謝系について、トリプトファンを持たずとも活性を持つ酵素群で反応ステップの過半数そろえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
工学的には、応用範囲の広い緑色蛍光タンパク質で、硫黄を持たない、という意味でこれまでに知られていない活性型変異体を得たことは、大きな成果である。理学的には、生物のコアとなる代謝系について、遺伝暗号表の天然の進化の最終段階で加わったと考えられるトリプトファン抜きで多くのステップの反応が進行できることを示したことは、次年度以降に繋がる十分な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
硫黄抜きGFPについて、特性の解析を進める。トリプトファンが無くとも活性がある酵素群で、一揃えの代謝系を構築する。
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