研究課題
課題1「遺伝子内抗抑制修飾はどのように制御され、どのように表現型に貢献するか」抑制修飾に必要な因子の変異体にその因子を相補することにより、抑制修飾確立に必要な因子を検出する系を構築し、これを用いて、CGサイトのメチル化とヒストンH2Aのバリアントが抗抑制に影響することを示唆する結果を得ていた(To et al 2020 Nature Plants)。CGメチル化酵素の変異体を用いることで、この修飾が抑制/抗抑制の確立に大きく影響することを示せた(To et al 2022 Nature Communications)。また、遺伝子内抗抑制経路を調べる過程でヒストンH3リジン4の脱メチル化酵素であるLDL2およびFLDの分子機能および生物学的機能を明らかにしてきた(Inagaki et al 2017 EMBO J; Inagaki et al 2021 Nature Plants)。さらにもう一つのヒストンH3リジン脱メチル化酵素であるLDL3の標的配列特異性、およびH3リジン4メチル化酵素の局在特異性から、転写がこの修飾を双方向に制御することを見出しつつある(Ishihara et al 2019 Nature Communications; Oya et al bioRxiv; Mori et al 論文準備中)。エピジェネティックな抑制/抗抑制を制御する新規経路として興味深い。課題2「配列特異的抗抑制因子はどのような機構でゲノムの広範囲に影響するか」VANCは標的DNAに直接結合することをゲルシフトで示している(Hosaka et al2017 Nat Com)。世代をこえて継承される脱抑制の系を用い、VANCによる抗抑制の祖先型と思われる系を同定した(Sasaki et al 2022 EMBO J)。また、VANCによる抗抑制とRNAi経路との遺伝学的相互作用の解明を進めている(Sasaki et al 論文準備中)。また、分子間力顕微鏡(AFM)によって、標的DNAとVANCとの直接の結合を、動画で観察することに成功するとともに、結晶構造解析によって、DNAと相互作用する領域を特定した(Saito et al 論文準備中、Tanaka et al 論文準備中)。
1: 当初の計画以上に進展している
抑制修飾確立においてCGサイトのシトシンメチル化とそれ以外のサイトのシトシンメチル化の間に局所的な正のフィードバックおよびゲノム全体での負のフィードバックがあることを見出した(To et al 2022 Nature Communications)。また、クロマチンリモデリングによるエピゲノムの抑制におけるヒストンバリアントの関与が示唆された(Osakabe et al 2021 Nature Cell Biol)。これらは当初想定したいなかった成果であり、今後の展開も期待できる。
課題1「遺伝子内抗抑制修飾はどのように制御され、どのように表現型に貢献するか」論文未発表の結果が充実してきているので、上記の結果を早めに完成させ、論文にまで持っていきたい。また、脱メチル化酵素タンパク質の相互作用因子の網羅的解析を行い、興味深い因子を同定しているので、その機能解析を進めたい。課題2「配列特異的抗抑制因子はどのような機構でゲノムの広範囲に影響するか」論文未発表の結果が充実してきているので、上記の結果を早めに完成させ、論文にまで持っていきたい。また、VANCによる抑制修飾除去の分子機構の候補因子を得ているので、その経路の検証を進めたい。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 861
10.1038/s41467-022-28468-5
The EMBO Journal
巻: 41 ページ: e110070
10.15252/embj.2021110070
Nature Cell Biology
巻: 23 ページ: 391~400
10.1038/s41556-021-00658-1
Science
巻: 374 ページ: eabi7489
10.1126/science.abi7489
巻: 12 ページ: 3480
10.1038/s41467-021-23766-w