研究課題
プロテアソームの細胞生理学研究として研究代表者らは、(1)プロテアソームの機能減弱マウスを作出して病理学的解析を行うと共に (2)プロテアソームの環境ストレス応答に関する研究を推進してきた。(1)については、プロテアソーム機能減弱マウスとして、プロテアソーム構成サブユニットpsmd12の異なる部位に変異をもつ3種類のヘテロ変異マウスを系統化することに成功した。これらの変異マウスのうち、最も欠失領域が大きい系統について、理研マウスクリニックにて生化学的解析、行動解析を実施したところ、肝機能低下、栄養不良、頭部形態異常、白血球数増加、動き出し遅延、文脈依存学習記憶の異常が有意に検出された。(2)の研究として研究代表者らは、高浸透圧ストレス刺激によりプロテアソームが核内に液滴を形成し核内タンパク質の品質管理に関与すること、K48連結型ユビキチン鎖とシャトル分子RAD23Bがプロテアソームの液-液相分離を駆動することを見出した。さらにATPレベル低下によって形成するプロテアソーム液滴について解析を進めた結果、ATP低下によってユビキチン化プロテオームが大規模にリモデリングされること、種々の複合体由来オーファンタンパク質がユビキチン化されRAD23Bを介して液-液相分離することが明らかとなった。このATPストレス応答性液滴は、ATPレベルが回復すると速やかに消失する可逆的な現象であった。即ち、本液滴の機能はユビキチン化タンパク質の迅速かつ一過的な隔離であることが推定された。また、興味深いことに、ATPレベル低下が長時間続くとユビキチン化タンパク質が不溶化したため、相分離が凝集体形成に関与することが示唆された。これらの結果は、神経変性疾患における異常タンパク質の液-液相分離による凝集性形成及び封入体形成の機序解明に大きなヒントを与える画期的な発見と考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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