研究課題/領域番号 |
19H01002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 剛 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80452308)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 教授 (00261389)
宮地 重弘 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (60392354)
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 特定准教授 (70418763)
伊藤 毅 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (20711485)
森本 直記 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70722966)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 霊長類 / 話しことば / 声帯振動 / 喉頭 / 音声 |
研究実績の概要 |
本研究は、サル類の声帯振動パターンの特性と、声帯を含む喉頭器官の解剖学的特徴との機能的関係を、実験と観測データの解析により明らかにする。その両者を、新たな声帯振動の計算モデルを立てることにより理論的に結びつけて、サル類に声帯振動パターン操作への機能形態学的適応を実証的に見いだす。本年度は、昨年度までに引き続き、声帯振動の吹鳴実験とEGG解析、サル類の声帯を含む喉頭器官の解剖学的解析を進めるとともに、電気生理学的実験と解剖学的解析を本格的に開始した。 声帯振動の吹鳴実験とEGG解析では、チンパンジーとマカクザルの吹鳴実験データの解析により明らかにした声帯振動パターンの生起要因について検討した。サル類の声帯構造とそれが生み出す音響学的効果を数理シミュレーションモデルにより推定し、サル類の声帯振動に関する理論的枠組みを確立した。また、それをもとに、ヒト声帯構造の派生的特性について検討した。さらに、サル類声帯の物理モデルによる実験を進め、それぞれの振動パターンが、呼気流量、声門の開閉の程度、声帯の弾性によって決定する仕組みを理解した。 声帯を含む喉頭器官の解剖学的解析では、キツネザル類に特異的な声帯構造を解剖学的、組織学的解析で明らかにし、その物理モデルを作成して、その特異的な構造がもたらす音響学的効果を明らかにした。また、サル類の声帯を含む音声器官形態を数値データ化するために、マイクロMRIによる拡散強調画像を用いた筋走向の可視化とデジタルデータ化に向けた撮像手法について、検討を始めた。 生体サル類で神経生理学的実験では、高速度カメラによる声門閉鎖と声帯振動の観測を行い、吹鳴実験で見られた全ての振動パターンを生体で確認した。これにより、これまでの吹鳴実験ならびに物理モデル実験の成果の真実性と妥当性を立証した。また、発声中枢からの神経トレーサーによる神経解剖学的解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画全体として、当初計画を大幅に上回るスピードで進捗している。声帯振動の吹鳴実験とEGG・高速度カメラ解析では、物理モデルによる実験にも拡大して進展している。また、喉頭器官の解剖学的解析は、新たな研究協力者を得て、想定以上に進展し、かつ拡張している。生体サル類での神経生理学的、解剖学的実験では、今年度に当初の遅れを取り戻し、計画したことはおおむね順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
収集されたデータを着実に解析し、サル類の声帯振動に関する理論的枠組み及びその関連論文をまとめて、刊行する。サル類の声帯振動の特性に関する物理モデル実験の解析をまとめるとともに、物理モデルの更なる改善を試みる。電気生理学的実験を進めて、発声中枢に関する神経解剖学的基盤を明らかにする。また、マイクロMRIによる拡散強調画像を用いた筋走向の可視化とデジタルデータ化に向けた撮像手法を確立する。全体計画の早期達成に向けて進める。
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