研究課題
未開拓の新規ニッチへの進出は、新しい資源の利用を可能にし、その後の適応放散を誘導しうる。一方、新規ニッチに進出できなかった分類群も存在するが、新規ニッチへの進出能の違いを生む遺伝基盤は殆ど未解明である。新規ニッチへ進出できる系統とできない系統の違いは何であろうか?本課題では、まず、淡水進出できたトゲウオ系統において、淡水環境への適応に重要な遺伝子を網羅的に同定し、淡水進出できない系統では適応遺伝子の多様性が低いのかを解明する。ついで、変異の生成と維持に影響を与える要因としてクロマチン構造に着目し、系統間でのクロマチン構造の違いを生み出す遺伝基盤を解明すると共に、それらが適応的変異の起こりやすさや維持されやすさに影響を与えるか検証する。本年度は、まず、太平洋系統での淡水ニッチ適応に重要な遺伝子を網羅的に同定するためにQTL解析を目的として、多数の家系を作出した。また、淡水集団にみられる選択の痕跡を解析しいくつかの淡水適応の原因候補遺伝子座を同定し、これまでに知られている北米集団での知見との比較を行った。また、集団ゲノム解析を行い淡水進出年代の推定を行い、異なる淡水化年代の淡水集団を複数同定した。ATAC-seqにてオープンクロマチン部位を探索する手法を確立しクロマチン解析の実験を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、QTL解析を開始し、集団ゲノム解析によって淡水進出年代の推定ならびに候補遺伝子座を同定できた。また、ATAC-seqにてオープンクロマチン部位を探索する手法を確立しクロマチン解析の実験を開始できたなど、当初の計画通り進んでいるから。
F2を用いて淡水適応実験を実施して、QTL解析を実施し淡水適応の候補遺伝子座を同定する。また、集団ゲノム解析によって適応の痕跡を示す遺伝子座を網羅的に同定する。その上で、淡水適応の候補遺伝子を同定し、遺伝子操作にて機能解析を行う。また、ATAC-seqとHi-Cにて集団間でのクロマチン構造の比較を開始する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
巻: in press ページ: in press
Genome Biology and Evolution
巻: 12 ページ: 479-492
10.1093/gbe/evaa065