研究実績の概要 |
これまでのex vivoイメージング解析から、後シナプスキノコ体神経細胞が産生するCOにより誘導されるドーパミン(DA)のオンデマンド伝達には、細胞外からのCa2+流入を必要とする拡散性伝達と異なり、細胞内Ca2+ストアからのリアノジン受容体(RyR)を介したCa2+流出が必要なことを見出した。これまでのex vivoからの知見をin vivoで検証するため、嫌悪性匂い条件付けの各タイミングでDAの放出を熱遺伝学的手法により阻害したときの影響を調べた。その結果条件付け中のDA放出でなく、条件付け終了直後からのDA放出が嫌悪性匂い条件付けの成立に必要なこと、加えて記憶想起時にもDA放出が必要なことを見出した。DAを受容する記憶中枢キノコ体は解剖学的特徴から16の区画領域 (pedc, α1-3, α'1-3, β1-2, β'1-2, γ1-5) に分類できる。そこでどの領域への連合後DA放出が条件付けの成立に、どの領域への想起時DA放出が記憶想起に必要か?投射領域特異的にDA放出を熱遺伝学的に阻害して調べた。その結果、特にキノコ体のγ 1領域へのDA放出が条件付けの成立に必要なこと、記憶想起時にはキノコ体α2とα’2領域へのDA放出が必要なことを見出した。これらを裏打ちするDA放出が実際に起こっているかを顕微鏡下に固定したハエでin vivoイメージングにより調べた。その結果、キノコ体γ 1領域では条件付け中のDA放出だけでなく、条件付け終了直後から起こるDA放出(連合後DA放出)を見出した。またα2とα’2領域では記憶想起時にDA放出が起こることも見出した。さらにCO産生酵素やRyRの阻害剤に加えてGSK3の阻害剤により連合後DA放出が特異的に抑制出来ることも判明した。
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