研究課題/領域番号 |
19H01022
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
望月 直樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究所長 (30311426)
|
研究分担者 |
中嶋 洋行 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10467657)
迫 圭輔 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (50786291)
福井 一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (80551506)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 左右非対称性 / ゼブラフィッシュ / 情報伝達系 / 中胚葉 / クッパ―胞 / 繊毛 |
研究実績の概要 |
生体の軸形成(前後、背腹、左右)の中で臓器配置の左右非対称性を生じるメカニズムの解明を目的にして研究を実施している。左右差は、ゼブラフィッシュのKupffer’s vesicle (KV)の繊毛の回転(流れ)とNodeシグナルの重要性が明らかにされつつあるが、他の軸形成に必須であるとされるWnt, Transforming growth factor (TGF)β/Bone morphogenetic protein (BMP), Notch シグナルが如何に左右非対称性に如何に関わるかを明らかにするために、胚全体で上記シグナルを可視化できる個体の作製とKVでシグナルを可視化するためのトランスジェニックラインを作製した。 BMP-responsive element(BRE)反応性にGFPを発現するBRE モニターリングフィッシュ胚では、これまでの報告のように初期発生では、Smad1,5,8依存性の転写を見ていることを反映しているために、尾部や肛側の体節でBRE:EGFPが観察された。KVより口側でも特に左右差がみられないことから、Nodal シグナルを片影するSmad2/3のシグナルを可視化する個体の必要性が明らかとなり、Smad4依存性の転写活性化を可視化して、Smad1/5/8 依存性のGFPレポータとの交配を開始した。Wnt とNotchの初期胚での転写活性のモニターリングは計画通りactinプロモーターで胚全体で転写の活性化可視化個体を作製した。また、Hippoシグナルの胚全体可視化個体も作製した。 また、中胚葉の可視化を行えるTg(draculin:mCherry)を作製して、中胚葉の形成時期と左右差を生じるTg(spaw:EGFP)のイメージングを行った。draculin陽性の側板中胚葉細胞には左右差がないことから中胚葉細胞内での差の生じ方に意味があると考えられ、その差を決定するシグナル解明が重要と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wnt, TGFβ/BMP, Notch, Hippo (Yap/Wwtr1 依存性転写)シグナルの可視化と左右差調節系の因果関係を調べるための個体の作製は順調に進んでいる。当初の予定通りに、胚全体でこれらのシグナルを可視化できるトランスジェニックラインを作製するとともに、KVでもこれらのシグナルの活性化が起きるかを調べる個体の作製も進んでいる。本年はBMPとTGFβ/Nodal のシグナルを分離できる個体を作製している。 上記シグナルは前後軸、背腹軸やGastrulationに伴う胚葉分離・形成シグナルにも深く関わることから、まずはその発現に左右差を認めるSpaw(ゼブラフィッシュNodalシグナルの一つ)と上記シグナルの関係性があるかを検証してきた。Spawの発現が左側に強く、早期にはKVの両側に発現することも報告されているので、Tg(spaw:sfEGP) の作製に取り掛かった。また、KV形成にともないDand5(Nodal抑制分子)がKVで発現することから、Dnad5の発現可視化個体を作製して、ラインにする過程で観察したところ、KV周囲でEGFPを発現することから、これまで報告されているようにDand5によるSpaw (nodal)の調節系が機能していることが予想できた。 これまでの研究で、左右差を可視化できる個体の作製とその調節系と予想されるシグナル可視化個体の作製が順調に進んでいることから、シグナルと左右差調節系の解明を進めることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
側板中胚葉の可視化個体としてTg(draculin:mCherry)を作製したので、中胚葉全体を可視化しつつTg(spaw:EGFP)で中胚葉の左右差がイメージングが可能となる。中胚葉臓器である心臓の形成過程をTg(draculin:Cre)で系譜解析も行うことが可能であり、Tg(Spaw:Cre)で左右差が初期に生じた細胞群の系譜も追跡が可能となる。内胚葉臓器も同じであり、膵臓・肝臓など左右差のある臓器では、どの段階で左右差が生じているのかTg(sox32:Cre)で系譜を追跡することにより左右差が出現する時期が明確になる。膵臓については既にTg(ins:mCherry)を作製しており、いつから左右差が臓器として出現するのかは、調べることが可能である。 Dorsal forunner cell (DFCs)が頭側から尾側に移動する際に、すでに左右差を形成するシグナルを生じさせながら(3つの胚葉に影響しながら)、KVを形成して、内部でも繊毛の回転により更なる左右差を生じている可能性を調べる予定である。そのためには、DFC が集合して移動するときに胚全体とKVでのシグナルの可視化が重要と考え、これまでに作成してきたシグナル可視化個体をさらに調べていく予定である。 当初の計画通り、シグナルの可視化による左右差決定機構の解明を目的とすることにかわりはないが、発生時のどの段階でシグナルの左右差が生じて形態学的左右差も発生するのかを突き止める必要がある。したがって内胚葉・中胚葉臓器観察(形態)とともに、シグナルの可視化も同時に行っていく方針である。
|