研究課題/領域番号 |
19H01025
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
烏山 一 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (60195013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 好塩基球 / 炎症 / アレルギー / 生体恒常性維持 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
最近、アトピー性皮膚炎の病態形成にTh2サイトカインが関与していることを示唆するデータが蓄積されてきた。実際、臨床試験において、IL-4/13受容体モノクローナル抗体dupilumabの投与によってステロイド外用薬で効果が不十分な中等度以上のアトピー性皮膚炎の症状改善が認められたとの報告がなされた。しかしながら、どのような細胞がTh2サイトカインを産生して、アトピー性皮膚炎の病態形成に関与しているかは良くわかっていない。 私たちは、化学物質のオキサゾロンをマウス耳介皮膚に反復塗布することで惹起されるアトピー性皮膚炎モデルを使って、Th2サイトカインの関与ならびにその産生細胞の解析をおこなった。オキサゾロン反復塗布にともない皮膚でのIL-4遺伝子発現が著しく亢進したが、一方IL-5やIL-13の遺伝子発現にはほとんど変化が認められなかった。そこでIL-4欠損マウスにオキサゾロン反復塗布したところコントロールマウスに比べて皮膚炎症の著明な減弱が観察され、IL-4の病態関与が明らかとなった。皮膚病変部位にはIL-4産生細胞として知られるCD4 T細胞、好塩基球、好酸球やマスト細胞の集積が認められたが、実際にIL-4を産生している主たる細胞は好塩基球であった。好塩基球は皮膚に浸潤している細胞のわずか2-3%を占めるに過ぎないが、好塩基球を除去したマウスではIL-4欠損マウスと同様に皮膚炎症の著明な減弱が認められた。さらに、好塩基球特異的にIL-4を欠損させたマウスでは皮膚への好塩基球浸潤が認められたものの、皮膚炎は著明に減弱した。以上の結果から、好塩基球の産生するIL-4がアトピー性皮膚炎の病態形成に深く関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学物質オキサゾロンの反復塗布によって誘導されるアトピー性皮膚炎のモデルマウスにおいて、皮膚浸潤細胞のわずか2-3%を占めるに過ぎない好塩基球が大量のIL-4を皮膚局所で産生することで、アレルギー炎症を引き起こしていることを突き止めた。 皮膚痒疹モデルマウスにおいて、皮膚に浸潤・集積している好塩基球から分泌されるアンフィレグリンが皮膚慢性炎症に寄与していることを明らかにした。 計画書に記載した慢性閉塞性肺疾患(COPD)における好塩基球の役割に関しては、当初の計画よりも研究が順調に進み、本事業がスタートする前に論文発表(PNAS)することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初に計画に沿って、生体恒常性維持における好塩基球の役割などに関して研究を進めていく。
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